めざめ

クリスタさんは、静かに

昨日の記憶を反芻した。


「たしか・・・・ご本を読んでいるうちに。


お歌を歌っていて。」



それでも、絵本を床に置いた事はなかった。



床と言っても、靴を脱いで上がる

ところなので、本が汚れる事は

ないのだけれども。



その、めぐが寝ている(笑)小部屋に

クリスタさんは。


ドアを開け、絵本が

デスクにある事に、なんとなく安堵。



「ゆきのひとひら」ね。



そうそう、児童文学っぽい

結構、芯のあるお話だったわ。



何気なく、表紙を見ると・・・



「あれ?めぐちゃんじゃ・・・・。」と


白い綿雲にくるまって、すやすや眠っている。




こんな絵柄だったかしら(笑)。




と、クリスタさんは

それを、不思議な偶然だと思ってしまった。



素直な人である。(笑)







絵本を、書架に帰そうとして

ひょいと持ち上げて。



その加速度で、めぐは目覚めた。





「あれ・・・・・?」


気づくと、めぐは

クリスタさんに運ばれて。


絵本コーナーに運ばれてて。




クリスタさんは、気づいていない。



「クリスタさーん」と、めぐは

大きな声を上げて。


でも、こちらは2Dの世界。

向こう側の3Dの世界とは、つながっていないから


音は聞こえない。




どうしよう、と思っている間もなく


児童図書館の書架に、収納されてしまった。



背表紙しか見えないので

めぐの事を発見してもらえる可能性は、あとはルーフィ頼みだ。



きっと、開館したら

助けに来てくれる。



そう、めぐは信じて待つしかなかった。



開館まで、あと少し。






ルーフィは、めぐの想像通り

図書館が開くのを、エントランスで待っていた。



あと5分、・・・3分。



時間旅行で進んでしまおうと思ったくらいだった。



そして、9時。



エントランスが開くと共に、ルーフィはカウンターに。


そこには、クリスタさんが

めぐの代わりに、受付をしている。




「あら、ルーフィさん。もう、お帰りですか?」




のどかな天使さんである(笑)。




「クリスタさん、めぐちゃんは?」





その雰囲気を察し、「いえ・・・ご一緒でなかったのですか?」不安顔。




カウンターなので、魔法の事は言えない(笑)。




「あの・・・絵本に・・・めぐちゃんが」と

そこまで言うと、クリスタさんは


「はい、絵柄に描かれていました。気づきませんでしたけど。」と


にこやかに、クリスタさん。




「その本、どこにありますか?」

と、ルーフィは尋ねる。



書架に戻しましたと、クリスタさんが

言うので「どこの?どこですか?」と


ちょっと慌て気味ルーフィ。



場所を案内してください、と

クリスタさんの手を取って、


カウンターを離れた。



「いかがなさったのですか?」と

クリスタさんは不思議に思って。




ルーフィは、歩きながら小さな声で


「その絵は、めぐちゃんなんです。」



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