第67話 荒海へと漕ぎ出す機人たち 22
「マシンファイタ―の知り合いか、いい機会じゃないか。これからは自分の手で道を切り開くんだ、どんな奴でも会ってみたらいい」
ショウに黒崎から聞いた情報を告げると、思いのほかすんなりと理解を示してくれた。
「もし『ハートブレイクシティ』の場所がわかったら、行くんだろう?……だったらちょうどいい。今ここでお別れしておこう」
ショウはどこかほっとしたような口調で言うと、麻利亜の方を見た。
「麻利亜、俺はいったん立ち入り禁止区域に戻って様子を見てくる。もし、危険が思いのほか少ないようならアジトを復元する」
「ショウ、私も行くわ」
「待て、それは危険がないとわかってからだ。悪いが俺が連絡するまでここで待機していてくれ」
「……わかった、待ってるわ」
「ショウ。……色々ありがとう。あんたがいなかったら僕はとっくに野垂れ死んでいた」
僕が礼を述べると、ショウは「礼などいい。貸し借りはないと言ったろう?」といつもの口調で返した。僕は頷くと「お元気で」と頭を下げた。
「周さん、しばらく留守にします。戻ってくるまで徹也と拓さんを……」
フロアの隅で『変面シート』に何かを塗っている周に僕が声をかけた、その時だった。
「俺も行くよ、基紀」
今までの話を聞いていたかのように、タイミングよく姿を現したのは徹也だった。
「徹也……」
「俺、マシンファイトの時も、麻利亜さんやショウが連れ去られた時もろくな活躍ができなかった。……足手まといかもしれないけど、一緒に行かせてくれよ」
徹也の告白に僕は思わず「そんなことないよ」と言いそうになり、すんでのところで飲み下した。男のプライドを傷つける権利など、僕にはない。
「わかった、黒崎さんに頼んでみるよ。 悪いけどその間、拓さんにはここで待機していてもらおう」
「――気にすることはないぜ、基紀」
徹也に続いてフロアに現れたのは、圧力調節煙草を咥えた拓さんだった。
「俺ははこっちで情報収集してみるよ。ちょうど、一人で考えてみたいこともあるしな」
拓さんはいつもの調子でそう言うと周と麻利亜、そしてショウを代わる代わる見やった。
「周さん、悪いがもうしばらく厄介になるよ。……ショウ、なんやかんやで世話になったな。スパーリングで味わったあんたの拳の痛さ、よく覚えておくよ」
拓さんはそれだけ言うと、再びひょこひょこと奥のスペースに姿を消した。
「徹也、僕は黒崎さんに連絡するから、お前は出発の支度をしていてくれ」
「了解。今度こそ役に立ってみせるぜ」
徹也は力強い眼差しを僕に向けると、意気込みを示すように握った拳を突き出した。
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