違いのわからない男
「ねえ、コーヒー買ってきたの。コピ・ルアクって最高級品よ」
「へぇ、茶色い水だね」
「あなたって本当に違いのわからない男ね」
「違いなんてないさ。例えばコピ・ルアクは猫の糞から出てきたコーヒー豆を使うんだけど、猫嫌いで潔癖のはずの君はそれを気にしなかった。どんな差異も情報も機能が同じなら意味はないのさ。結局それらは全部おなじ。全部コーヒーさ」
「どうしてそんな意地悪を言うの。わたし、あなたがわからないわ」
「おかしいな。わからないはず無いさ」
「冗談。全然わかんないわよ」
「わかるさ。だってあなたは、わたしなんだから」
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