Scene3/8
学校につき、大地は最初にゲタ箱を確認した。だけど中には自分の上履きだけしか入っていなかった。一方で海路の下駄箱にはメッセージ入りのチョコがいくつも入っていた。海路は口笛を吹いて、チョコは鞄に詰め込んでいた。
教室に入ると生徒達がグループに別れて談笑していた。一見するとそれは普段通りの景色だったが大地は眉間に皺を寄せた。
「杏香の席に鞄がない。風邪でも引いたかな」
大地が呟くと、海路がニコリと微笑んだ。
「これで幼なじみエンドはなくなったな」
大地達はこの日の学校生活を始めた。国語、日本史、体育はバスケで、大地と海路はチームを組み、同じ部活で培ったチームワークでバスケ部がいるチームに黒星をつけた。女子生徒の中でも大地を応援する生徒がいて、大地は頬を赤らめた。だけどそんな状態になっても、チョコレートをくれる女子生徒は現れないまま、昼休みを迎えた。大地は諦めにも似たため息を漏らし、廊下をトボトボ歩いた。
大地くん、と声をかけられたのはそのときだった。大地が振り向くとそこには茶髪の女子生徒が後ろ手に組んで立っている。
「
大地が名前を呼ぶと、彼女、霞はニコリと笑い歩み寄った。
「大地くん購買いく? 私もカフェテリアいくんだ。」
大地と霞は並んで進んだ。
そこで改めて大地は彼女の姿を観察した。
編み込みのあるハーフアップでまとめた髪や綺麗な猫顔に合うふっくらとした唇。そしてスラリと伸びる脚が垢抜けていて、廊下ですれ違う男子生徒の視線が自然と彼女に流れていく。そんな彼女が鈴を鳴らすような声で大地に話かけた。
「さっきの体育、すごかったね。バスケ部の人達に負けないくらい巧かった」
「小さいときから、杏香のバスケに付き合わされていたら形になったんだ」
「……杏香ちゃんと仲がいいんだね」
「ただの腐れ縁だ。あいつには好きな男がいるらしい。数ヶ月前からファッション誌買ったり、制服を着崩したり、今まで自分で切っていた髪を美容院で切ってもらったりしてるんだ」
「大地くんのことが好きなんじゃない?」
「あいつオレを避けているんだよ。たぶん、オレとの仲を好きな奴に誤解されたくないんだ」
「ふぅん、そっか」
そう話しているうちに購買についた。購買の隣はカフェテリアになっており、霞の友人達が席を取っているのが見える。
「私、いくね」
そのとき、霞が後ろに組んだ手を大地の制服のポケットに突っ込み、息をかけるように耳元で囁いた。
「さっき会ったのは偶然じゃないから」
霞は悪戯なな笑みを浮かべ、友人達と合流した。
大地は自分のポケットに手を伸ばし。それが四角い箱であることに気づき息を呑んだ。そしてそそくさと教室に戻り、鞄に詰め込んだ。こうして大地は意中の相手から二つ目のチョコレートを獲得した。
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