マガサシタンダヨ

ののくん

1回目 だれの指示

わたしの病院は1ブロックに2から3科の診療科が入っている。

16時30分

今日の仕事は、先が見えてきた。

泌尿器科の看護師が駆け込んできた。

「デジカメを貸してほしい。オペ室にもっていってもいいか?」

かまわないよ。もう使う予定ないから。

「大きな指輪カッターある?」

指輪カッターは救急部から借りてくるものだから、うちにはないよ。

指輪が抜けないのか。

職員?


「今、オペ室に運ばれた男だが、陰部に仏壇にある筒状のものをはめ込んで抜けなくなったらしい。

真鍮製で真ん中の厚みが3cmはある。

はやく切らないと陰部が壊死してしまう。

陰部と筒状のものはピタリとくっついていて隙間がない。

何か方法はないものか。」


うちの科には真鍮を切断するものはない。

なぜ、そんなことをしたのか。

泌尿器科の看護師はデジカメを抱え飛び出していった。


次の日、デジカメを返してもらい、画像の確認をする。

陰部の根元まで真鍮製5cmほどの”ナニカ”ははめ込まれており、陰部は重力とは反対方向に直角に曲がっている。

色がおかしい。

どうやって切断したのだろうか。

どちらを切断したのか。


「結局、メスもだめ。チップソーのようなものではないと切れないが、チップソーは滅菌していないし、滅菌する時間もチップソーもない。

結局、歯科口腔外科から親知らずを削るカッターを借りてきた。

40本までは数えたけど。

だれに請求するのかね。」


ジップロックに入った切り口がぼろぼろの真鍮製の”ナニカ”を見せてもらう。

ずっしり重い。

よく、こんなものを陰部の付け根まで入れられたものだ。

一体なぜ、こんなことをしたのか。


「親族がなくなり、毎日仏壇と話していたらしい。

ある日から、声が聞こえるようになったと。

その声が、つけろと言ってきたため逆らえなかったと。」


魔ガサ、シタンダヨ。

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