第70話 てんとう虫作戦の結果

「てんとう虫、この指止まれー」


 てんとう虫がマリーの指に群がってくる。


「はい、整列。マリー数えて」


 てんとう虫が地面に整列する。

 10匹ごとに列を変える数えやすい仕様だ。


「数えるよ。3列と4匹で34匹」


「マリー、今までの合計は?


 マリーが紙に書いた数字を計算する。


「24匹+41匹+……34匹で999匹。1匹、足りないね」

「どうやら釣り針に掛かったらしい」


 ライオン達の先導で盗賊のアジトを目指す。

 やはり、盗賊のアジトはツリーハウスだった。


「【具現化】ドラゴン。ツリーハウスを壊せ」


 ドラゴンがツリーハウスを壊していく。

 落ちて動けなくなった盗賊に止めを刺して駆除終了。

 これを繰り返すのか。

 だるいな。


 俺達はクランハウスにやって来た。


「盗賊の情報を売りたい」

「ほう、アジトを突きとめたのか。やるな」

「スキルで虫を放ったんだ。盗賊を見かけたらくっ付く仕組みだよ。特殊な匂いを出すから、それをライオン達が辿ってくれる」

「考えたな」

「毎日、情報がある訳じゃないけど、確実にアジトに行けると思う」

「よし、買った」


 次の日街道で、てんとう虫の数を数える。

 3匹、少ないな。

 居なくなったてんとう虫を追えとライオンに命令しても追わない。

 あれっ、てんとう虫がもう盗賊にばれたのか。


「あー、てんとう虫さんが鳥に食われた」


 マリーが指差した先を見ると、鳥がてんとう虫を咥えて飲み込んでいる。


「くそう、鳥にやられるとは考えてなかった」


 ポリゴンを食っても腹に溜まらないのにな。

 食うなよと言いたいが、鳥に言っても仕方ない。


「てんとう虫さん可哀そう」

「マリー、心配するなよ」


 これをどう克服しよう。

 電気ショックだ。

 動物は痛みを学習する。


 魔法テクスチャーをてんとう虫に貼って、鳥などに捕まると電撃を出すようにした。


「今度は大丈夫なはずだ」


 観察するとまたさっきの鳥がやってきて、てんとう虫を咥えた。

 バチッと音がして鳥は慌てて、てんとう虫を放した。


「てんとう虫さん、良かったね」


 てんとう虫の全てに魔力を充填するは骨だが、威力は最低で良い。

 驚くほど少ない魔力で済んだ。

 別に鳥を殺したり気絶させる必要はないからな。

 ピリッときて不快に思うだけでいい。


 次の日。


「てんとう虫は995匹だよ」

「よし、一匹少ない。イオ、追えるか」


 うなずくイオ。


「よし、クランハウスまで鷹を飛ばそう」


 鷹が空を舞いしばらくして冒険者達がやってきた。


「格安で情報を売ってもらって悪いな」

「いいんだよ。盗賊を潰すのは飽きたから」


 冒険者達がイオの案内で森に入る。

 数時間経ちホクホク顔で戻ってきた。


「楽勝だったぜ。高い位置にアジトを構えるのも、考えものだな」

「ああ、弓矢に気をつければ、後は火攻めで王手だ」

「坊主、明日も頼むぜ」


 一仕事終えたので、クランハウスに顔を出した。


「ディザ後輩、盗賊の情報を俺にも売れ」


 ジュエルスターが居てそう言ってきた。


「他の冒険者より優遇するのはどうも」

「ザコの情報は要らない。必要なのは頭目だけだ」


 なるほど、頭目専用のてんとう虫を作るって事ね。


「出来ると思う」

「情報を持ってきたら金貨10枚を出そう」

「分かったよ。首を長くして、待ってて」


 頭目専用のてんとう虫100匹を放った。

 そして、討伐したアジトが10を超えると盗賊の出没情報は無くなった。

 しかし、まだ頭目が捕まっていない。

 それに気がかりな事がある。

 殺されたてんとう虫が居たのだ。

 それも頭目専用の奴ばかり。

 我慢強い鳥にやられたと思いたいが、絶対に違うだろ。

 頭目が用心深いのか。

 それとも虫嫌いなのか。

 どちらにせよ、頭目が居る場所が分からなければ襲撃はかけられない。


「ディザ後輩、まだか」

「ごめん、出来ると言ったけど、芳しくない。頭目の能力が分かれば、別のアプローチも出来るんだけど」

「仕方ない。俺もスライムを放ってはみたが、頭目に会った固体は潰された」


「へぇー、詳しく聞いて良い」

「小石程のマイクロスライムを斥候として放ったが、一定数が帰って来ない」

「それはどういう能力のスライムなの?」

「足で踏むと靴底に取りついて、行く先々で痕跡を残すというものだ」


「ふーん、ザコ盗賊はどうだった?」

「足跡を辿れていくつかアジトを潰した」

「なるほど」


 仕掛けがばれた訳ではないようだ、

 ザコ盗賊を消費しても良い事はないからな。

 頭目だけに近づけないか。

 殺す結界のような物があるのかも知れない。

 だとすると、取りつかせるのではなく後をつけるタイプが有効かな。

 音もなく尾行できる生き物か。

 そんなのあるかな。

 鳥は駄目だ。

 フクロウなんかでも、追いかけてくれば目立つ。

 宿題にしておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る