第54話 軍団との対戦

「三人目は軍団さんか」

「坊主、借りが一つあったな。それを使えば見逃してやる。ただし引き返せ」

「嫌だね。だって負けないもの」


 軍団さんの剣は俺が作った物。

 消すのも俺の自由だ。


 ただね、それじゃ面白くない。

 ハンデをもらって勝つなんて嬉しくない。

 どうしてもの時は使う手だけど、勝負してみたい。


「始めるぞ」

「ああ、初手は貰うよ。【具現化】鎧の戦士と剣。倍化剣をお願い」


 鎧の戦士が剣を振るう毎に速度を増して行く。


「【多腕】アーミースラッシュ」


 軍団さんのアーミースラッシュと倍化剣の打ち合いになった。

 どっちも一歩も引かない。


「埒が明かないな。【多腕】アーミーバインド」


 軍団の足から手が出てきて鎧の戦士の足を取った。

 不味い。

 アニメーションは決まった型を実行しているだけだ。

 足さばきが出来ないと上半身も動かない。


 案の定、鎧の戦士は軍団さんに斬られて光となった。


「【具現化】岩神。押しつぶせ」


 駄目なんだろうなと思いながら岩を出した。


「【多腕】アーミースロー」


 おいおい、10本の腕で大岩を投げるかよ。

 レベル高いんだろうな。

 そんでもってステータスも高い。

 Sランクは本当に化け物だな。


「【具現化】モグラ100匹。地面に引きずり込め」

「【多腕】アーミーディグ」


 10本の手があってステータスが高いと埋められても脱出できると。

 なるほどね。

 大体落ちが分かる。

 魔法撃っても迎撃されて、ライオンも全滅で打つ手なしってところか。


 俺は背負っていたライフルを構えて撃った。


「【多腕】アーミーガード」


 10本の腕が急所をかばう。

 弾は腕に当たり弾かれた。

 うん、効かないな。


 ふっ、見切ったぜ。

 腕が余分に背中から生えるのはバランスが悪い。

 狙い目は足じゃないのか。


「【具現化】巨大ゴム輪。縮め」


 ゴム輪が軍団の両足首を締め付ける。

 軍団は倒れそうになった。

 やはりだ。

 足で踏ん張れないと背中の腕のバランスがとれない。


「【多腕】アーミーシュレッド」


 やばい拘束が解かれる。


「【具現化】巨大ゴム輪。縮め。【具現化】巨大ゴム輪。縮め。……【具現化】巨大ゴム輪。縮め」


 巨大ゴム輪を連打してやった。

 これで少し時間が稼げた。

 今のうちに、切り札を一つ切ろう。


「【具現化】フラッシュ」


 強い光が具現化された。

 足の拘束を取る事に夢中になっていた軍団は反応が一瞬遅れた。


「ディザ、酷いよ。目がチカチカする」

「マリー、ごめんよ。時間が経てば治るから」

「もう、これをやる時は今度から言ってね」

「ああ、そうするよ」


「降参だ。目が良く見えなければ、迎撃できない」

「シェードの悪だくみを、降参ついでに教えてよ」

「俺が依頼されたのはある薬草の移植だ。面倒だったから、グループの下っ端に任せたが。ありゃ何だったのかな」


 たぶん、メタルスコーピオンの涙の事を言っているんだろうな。


「それはもう済んだ事だ」

「後は坊主の従魔をグループ総出で狩らせてもらった」


「ライオンさんの仇」


 マリーがライフルを構えるが、まだ目が復活してないんだろう。

 少し明後日の方向を銃口が向いた。


「マリーやめなよ。ライオンさんは復活するんだから」

「でも何の罪のないライオンさんが犠牲になったかと思うと」

「ライオンさんは俺の中に生きているんだ。俺が死なない限り死なない」

「なら許す」


「後は何かないか」

「悪だくみかどうかは知らないが、大商人や有力者の情報を集めていたな」


 資金が底をつきそうだから、援助してもらう予定だったのかな。

 Sランクを解雇したのもそこいらに理由がありそうだ。


「なるほど。ちなみに勝負の順番はなんで決めた」

「やる気のある順だ。暴風が一番やりたがった。二番目はクラッシャーだ。あいつは戦いが好きだからな。俺はそれほどやる気はなかったが、極速きょくそくが一番嫌がった」

「そうか、じゃ極速きょくそくさんには手加減してやらないと」


 とにかく残るは極速きょくそくと盗賊団だけだ。

 後、何か忘れている気がするんだよな。

 何だっけな。

 思い出せないのなら大した事じゃないのだろう。

 とにかく、シェードをやれば全ては方がつく。

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