第52話 暴風との対戦
貴重な薬草を採取すべくライオン達の後をついていく。
子供の足なので進みは遅いが、一日に一件こなせれば良いと思っている。
途中ライオン達の足が止まった。
むっ、どうしたのか。
「ふっ、マリーちゅぁん。待ってたわよ」
この女性はクラン・デスタスのSランクで通り名が暴風だ。
「私は待ってない」
「なんか用か」
「男に用なんてないと言いたいところだけど、そうもいかないのよね」
「依頼を妨害しろって、シェードに言われたか」
「まあ、そんなところ。マリーちゃんが手に入るから受けたのよ。勝負してもらうわ」
「勝負は受けてやるが、冥途の土産にシェードの悪事を全部喋っとけ」
「そうね。あなたの冥途の土産にね。私がやった仕事は怨念の書を運んだだけ」
「怨念の書はアンデッドを生み出すあれか」
「ええ、そうよ。呪い耐性に切り替えて盗賊団のアジトまで運んだわ。盗賊が何人か死んだようだけど、その後の事は知らないわ」
きっと、あの怨念の書を運んだ盗賊はシェードに誘導されてあそこまで歩いたのだな。
たぶん呪いを解いてやるなんて上手い事を言われたんだろう。
その情景が目に浮かぶ。
「マリーは下がって見てろ。じゃあ、始めようか」
「ええ」
暴風は鞭をほどいて、何度か地面を叩いた。
鞭使いなら近距離攻撃が苦手そうだ。
「ライオン、かかれ」
鞭がうなりライオン達が叩き伏せられ、光となって消えていく。
ライオン達だけでは耐性スキルを使うまでもないって事か。
俺は背中に背負っているライフルで撃った。
弾は暴風の体に当たったが、ダメージはないようだ。
ライフルが消えたところから察するに物理耐性に切り替えていたんだろう。
「いまの攻撃はちょっと感じたわ。もっと熱くさせなさい」
「【具現化】ファイヤアローとアイスアロー。飛べ」
炎の矢と氷の矢を同時に撃つ。
「【耐性】炎」
耐性を炎に切り替えて、アイスアローは鞭で迎撃された。
ファイヤアローは当たったが当然ダメージはない。
「良いわ。もっと熱いのを頂戴」
くそう、3属性同時ならいけるのか。
いや、いけそうにない。
もっと何か別の方法がないと駄目な気がする。
ええい、ままよ。
「【具現化】ファイヤアローとアイスアローとサンダーアロー。飛べ」
鞭でアイスアローが撃退され、サンダーアローとファイヤアローが着弾。
「【耐性】傷。しびれたわ。もっとよ。もっと来なさい」
ダメージを耐性で治すんだった。
前もって聞いていたのにな。
魔法の撃つ数には限りがある。
限界まで撃ってダメージゼロなんて光景が脳裏に浮かぶ。
「来ないなら、こっちから行くわ」
「【具現化】岩神。押しつぶせ」
「【耐性】物理」
岩が暴風に圧し掛かるが、血が飛び散るような事にはならない。
ただ、足止めにはなったようだ。
この間に何か考えないと。
耐性って事は受けって事だよな。
受けが存在しない攻撃を考えれば良いんだ。
そうだあれしかない。
「【具現化】モグラ100匹。モグラさん暴風を土の中に引き込んでくれ」
モグラが土の中に消える。
しばらく経ち暴風の体が土の中に消えた。
「岩神、ご苦労様」
現在、暴風は頭だけを地面から出していた。
「考えたわね。でも、抗わせてもらうわ。【耐性】圧力。あれ、びくともしない。普通の拘束具ぐらい抜け出せるのに」
「そりゃ、そうだろ。締め付ける力を無効化したからと言って、地面から掘り出される訳がない」
埋まった状態から抜け出すには、とてつもないパワーが要るはずだ。
「ディザ、どうするの」
「怨念の書の件は盗賊が被害にあっただけだろ。だから、罪を犯したとは言えない。依頼がかち合った冒険者が勝負になる事も珍しくない。無罪だから放置していく」
「ちょっと、放置プレイは好みじゃないんだけど」
「負けを噛み締めておけよ。じゃあな」
「じゃあね」
「マリーちゅぁん。置いて行かないで」
「ディザ、行こう」
「ああ」
Sランクをなんとか出来たが、今回のは運が良かったとも言える。
こっちの対応力が上回った。
後の3人も勝負を挑んで来るんだろうな。
だが、負けない。
ポリゴンは形あるものなら必ず作れるはずだ。
この世にある物で対処可能なら、対処できる。
俺は自信を胸に刻んだ。
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