第29話 真夜中の激闘

「【作成依頼】大岩を1万ポリゴン以内で作ってくれ」

「作成料として金貨10枚頂きます」

「やってくれ」


 財布から出した金貨10枚が溶けるように消えた。


「作成完了」


 おお、どこから見ても自然な大岩がモデリングされている。

 これなら良く見ないと作り物だとはわからない。

 強度も相当上がっているはずだ。


 次は何を頼もうか。

 家を頼もう。


「【作成依頼】家を10万ポリゴン以内で作ってくれ」

「作成料として金貨15枚頂きます」

「頼むよ」

「作成完了」


「よし、【具現化】家」

「これが新しい家なのね。凄いわ。ドアも木でできているし、窓枠もある」

「前のは手抜きだったからな」

「入ってみたい」

「どうぞ」


 ドアを開けてマリーを中に入れる。

 中には部屋が三つあり、居間には暖炉がある。

 食堂はシンク付きだ。

 流石に水道は無いが。

 中々使い勝手が良さそうだ。


 寝室にはベッドがあった。

 ダブルなのがそこはかとなく何かの意図を感じる。

 夫婦ではないんだけどな。

 それとも注文する時に自然とこれを思い浮かべたのかも知れない。


 さてと、他に何を作成依頼しようか。

 ライオンの強化かな。


「【作成依頼】ライオンの雄雌と子供を各1万ポリゴン以内で作ってくれ」

「作成料として金貨30枚を頂きます」

「もってけ泥棒」

「作成完了」


 稼いだ金の大半が消えた。

 ライオンが倒してくるオークは状態が悪いから買取価格も下がる。

 沢山稼いだような気がしてもそれほどではない。

 今は稼ぎ時だから、またお金は貯まるだろう。


「【具現化】イオ、ガニメデ、カリスト、エウロパ。それにバナナと雌ライオン大勢」

「バナナがなんとなく丸くなった」

「うん、角が取れているから、触り心地も良くなっているはずだ」

「変わってしまって、街の人がびっくりしないかな」


「うん、考えてなかった。なんて言い訳しよう。進化したはどうかな」

「魔獣は進化しないよ」

「そうだった。じゃ散髪した」

「毛はないじゃない」

「無いけどさ。本物はあるんだ」

「本物のバナナに会いたいな」

「機会があればね。さあ、今日は遅い。もう寝よう」

「うん、お休み」


 夜中に表が騒がしい。

 窓から外を見ると黒ずくめの人間とライオン達が戯れていた。


 一人しかいないところを見ると強敵かな。

 慌てて外に出る。


「【風刃】切り刻め」


 おう、覚醒者か。

 ライオンはひらりとかわした。


「なぜ当たらん」


 そりゃAIが優秀だからだろう。


「【具現化】巨大ゴム輪【アニメーション】縮め」


 殺し屋の足をゴム輪で拘束する。

 殺し屋はもつれるように倒れた。


「顔は噛まないようにね」

「や、やめろぅぅぅ」


 うん、マリーが起きて来なくて良かった。

 情操教育に良くない。

 なんせ内臓垂れ流しなんだもん。

 俺も見たくなかった。


 ライオン達はより一層ライオンに近くなったような気がする。

 はらわたを狙うとはな。

 オークの狩りの時は内臓を引きずり出させいように言っとかないと。

 首すじを噛めと言っておけば大丈夫か。


 こいつの遺体を持っていくのは嫌だな。

 よし、埋めちゃえ。


 ユンボを出して遺体をバケットですくって、ライオンの半数を護衛に森へ出発した。

 夜の森は不気味に見える。

 手早くしたい。


 森の地面をユンボて掘って遺体を埋めて土を掛ける。

 そんな事をしていたら、カンテラに照らされて暗闇に多数の目が光を放った。

 こいつらは、オークの大群だ。

 千以上いるかも知れない。

 くそ、穴を掘るのに夢中で油断してた。


「【具現化】岩神。転がって潰せ」


 AIを入れた大岩、名付けて岩神が転がる。

 岩のどこに耳があるのかは聞かない約束だ。


 オークの群れが途切れない。

 一体何頭いるんだ。


 ライオン達を攻撃に参加させるべきだろうか。

 このままじゃ、ジリ貧か。

 岩をもう一つ作るか。

 いや、倍化剣を作ろう。

 最大で8192回の斬撃をかいくぐれるとは思わない。


 下地は前に作った物があるから、そんなに時間は掛からないはずだ。

 いや待てよ。

 作成依頼すれば良いんだ。


「【作成依頼】フライングソードの色々な斬るアニメーションを頼む」

「作成料として金貨5枚を頂きます」

「仕方ない」

「作成完了」


 後は斬るアニメーションを組み合わせるだけだ。

 ちょっと待てよ。

 AIを入れてみるか。


「倍化剣を再現。目標オーク」


 おー、オーク達が切り刻まれていく。

 勝ったな。

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