第18話 初めてのお使い

 エンペラー3号が薬草を採ってくるので、働かなくても食っちゃ寝が出来る。

 しかし、子供の頃からぶくぶく太りたくない。

 健康にも良くないし。


 それで選んだのが買い物依頼。

 いわゆるお使い依頼って奴だ。

 手で押す台車をポリゴンで作ってアニメーションで転がした。


 依頼主の家の扉をノックする。


「ギルドから来ました」

「きましたぁ」

「あら、可愛い冒険者さんね。沢山買い物があるけど平気かしら」


 老婦人が出迎えてくれた。


「台車があるので大丈夫です」

「そう、今は便利な物があるのね」

「そう、ディザは便利。凄いの」

「男の子はディザ君ね。あなたは誰かしら」

「マリー」

「マリーちゃんね。今日の依頼が上手くできたら、指名依頼を出すわ」


 そうだ。

 エンペラー4号にお使いをやらせてみよう。

 エンペラー4号の尻尾に台車の取っ手を結ぶ。

 買い物のメモを台車の取っ手に貼り付けてと。

 小銭入れを付けて、準備万端だ。


「準備満タンだね」

「いや、準備万端だけど。まあいいか。エンペラー4号お使いをしてくれ」


 エンペラー4号が吠えるアニメーションをする。

 了解したって事なんだろうな。


 エンペラー4号の後をマリーと歩く。

 最初のお使いは肉屋だ。

 俺達は物陰から覗う。


「へい、いらっしゃい」


 エンペラー4号が吠える動作をする。

 そして、振り返りメモのある所を猫パンチする。


「むっ、何だ。それを読めっていうのか」


 メモに気づいてくれたようだ。


「へい、オーク肉一キロお買い上げ」


 肉屋は台車にオーク肉を載せ、小銭入れから金を取った。

 上手くいったようだ。

 次は粉屋だな。

 ところでエンペラー4号は店の位置をどこで知ったのだろう。

 データベースを持っているに違いない。

 このAI無駄に高機能だ。


「ひっ、魔獣が街を歩いている」


 粉屋が腰を抜かした。

 その対処は考えてなかった。

 エンペラー4号を消す。


「失礼しましたー」


 台車を回収して立ち去った。


「あー、再チャレンジだな」

「ライオンさん可愛いのに」


 可愛く見せないといけないのか。

 ライオンの子供のモデルをショップで買う。

 そのままだと迫力がないので、大型犬ぐらいの大きさに拡大する。

 これなら浮浪児も金を盗るなんて考えないだろう。


 よし、完璧。

 いや、ワンポイントだ。

 花を頭に一本植えた。

 完璧だ。


「【具現化】。新エンペラー4号だ」

「可愛い。マリーのも作って」

「エンペラー4号の仕事がない時はマリー専属だ。モフれないけど、可愛がってやってくれ」

「うん」


 粉屋に再チャレンジする。


「い、いらっしゃい」


 粉屋の腰は引けているが、なんとかなった。

 小麦粉を無事ゲットできた。


 最後は八百屋だ。


「らっしゃい?」


 エンペラー4号がメモの所で猫パンチする。


「おっ、なんか知らないが和むねぇ」

「あら、可愛い魔獣。誰かのペットなのね。そうだ、八百屋さん人参を頂戴」


 その後も主婦が野菜を買って行く。


「お前さんのおかげで商売繁盛だ。おや、メモがあるぞ」


 気づくの遅いよ。


「よし、小っちゃい荷車に積んだぞ。また来てくれよ」


 手を振る八百屋に見送られて、買い物は終わった。

 依頼主の所に行きエンペラー4号が扉をガリガリと引っかく。

 ここは要改善だな。

 掌の中に円柱を仕込んでノッカーのアニメーションを作ろう。

 猫パンチのアニメーションをコピーして付け加えるだけだから、出来るだろう。


「何かしら。まあ、あなたがお使いしてくれたの。偉いわ」


 俺達は物陰から出て来て近寄った。


「これからはこのエンペラー4号がお使いをします」

「それは少し残念ね。毎日あなた達のお顔が見たかったのに」

「たまには遊びに来ます」

「それがいいわね。今度来た時はお茶とお菓子を用意しておくわ」


「その時はご相伴に預かります。では依頼書にサインを」

「はい、ご苦労様」


 エンペラー3号は薬草採り。

 エンペラー4号はお使い兼マリーのペット。

 エンペラー5号は何になるんだろう。

 先が楽しみだ。

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