第13話 大岩アタック

 今日から修行する事にした。


 と言ってもモデリングする事とアニメーションを操るぐらいしかないんだけどな。

 範囲攻撃が欲しいという事で連打を作った。

 一対の籠手がランダムに猛スピードでパンチを繰り返すというものだ。


「すごーい。これがあったら怖い大人もだじたじね」

「うん、一般人には無双できるけど、チンピラを相手にするのもな」


 とりあえず、接近してくるものはこれで吹き飛ばせるな。


「次はナイフでやってみよう【アニメーション】十段突き」


 ナイフを飛ばして突きを繰り返すというのも作った。

 的にした立木が刻まれる。

 アニメーションにも具現化のイメージの法則はつきまとう。

 銃の弾は速くできるが、ナイフはそれほど早く出来ない。

 人が投げる限界は超えられない。

 今の状態は正直、威力不足だと思う。


「野犬ぐらいなら、楽勝ね」

「うん、その通りだ」


 猪クラスが出て来たら突進が止まるだろうか。

 弾かれそうな気もする。


 もっと、魔獣の群れを一網打尽にやっつける攻撃が出来ないものか。


 巨大な物体を出して押しつぶせば良いんだ。

 そういう考えに至った。


「そうだ、3倍ライオンって強いのか」


 3倍のライオンと大きくしてないライオンを具現化した。

 走らせ衝突させる。


「あっ、ちっちゃいライオンが勝った。可愛いは正義ね」

「嘘だ。3倍ライオンが弱いなんて」


 要するにライオンはライオンの大きさじゃなきゃイメージにそぐわないって事だろう。

 イメージにそぐわなければ弱いという事だ。


 でかいもの。

 シンプルに大岩なんてのが良いな。

 大岩のモデリングなんてのはショップに売ってない。

 作るか。

 球体をランダムに上下にゴツゴツさせて、石のテクスチャーを貼る。


「なんか、張りぼての岩みたい」

「汚れがないので岩に見えないんだな」


 さすがに自然物に見せるのは難しい。

 前世ならカメラで岩を撮影して、それをテクスチャーにしたのに。

 よりリアルに見せるのはムラがないとな。


 仕方ないのでショップでテクスチャーを買う。

 岩場を撮影した物もあったので、買って貼ってみた。

 良いんじゃね。


「今度はどう」

「うん本物の岩に近くなった」


 花がショップにあったので岩に植える。


「お花、可愛いね」

「うーん、そぐわない。これを武器にするのは嫌だ」


 苔とかないかな。


 おお、ショップのテクスチャーには苔がある。

 買ってみよう。

 格闘する事数時間。

 大岩が完成した。

 重さが何十トンクラスの大きな岩だ。


「わー、大きな岩」

「うん、我ながら良い仕事をした。よし、メテオ攻撃【アニメーション】落下」


 空中から地響きを立てて地面に着弾する大岩。


「すごい、迫力。これならどんな魔獣もイチコロね」

「うん、そう願いたい」


 必殺技が一つ出来た。

 これは覚醒者の戦闘力が数百倍と言われるのも頷ける話だ。

 自分自身の近くで運用出来ないけど、範囲攻撃にはなるだろう。


 複数いっぺんに落としたり、ピストン運動させたり、色々と工夫する。


「なんだ、街の近くで地響きがするというので来てみたら、お前らか」

「あっ、剣聖さんだ」

「悪い、必殺技の特訓をしてた」

「面白いな。いっちょ勝負してみるか」

「えっ、大岩に挑むのですか」


 リーナが要注意だと言っていたが正にそのとおりだ。

 思わず敬語になっちまった。

 この人に現状で敵わないと思う。


「おう、俺の上に落としてくれ」

「死にますよ」


 とは言ってみたものの大岩が負けるような気がする。


「なに構わん。やれ」

「どうなっても知りませんから、【アニメーション】落下」


 俺は大岩を剣聖の上に落とした。


「【斬撃強化】、溜めのいち、溜めのに、溜めのよん、溜めのはち、溜めのいちろく、溜めのさんに、溜めのろくよん、溜めのいちにっぱ、溜めのにごろ、溜めのごいちに、溜めのいちぜろにいよん、溜めのにいぜろよんはち。解き放つ破音剣、おりゃー」


 ブーンと羽音がして、剣がぶれて見えなくなり、大岩に叩きつけられる。

 光となって消えて行く大岩。


「負けちゃったね」

「いや負けて良かったよ。さすが人をミンチにしたくない」

「いい汗かいたぜ。俺の勝ちだな。なんかおごれよ」

「えー、自分から勝負を言い出して、子供におごれなんて言うんですか」

「いい経験になっただろ。授業料だ」

「はいはい」


 この人、無駄足になったうっぷんを晴らしたかっただけじゃないのか。

 そう、思う。


 あれだな。

 負けた理由は岩の作りこみが甘いのだな。

 だが、俺にはここらが限界だ。

 ポリゴン数を増やすのはスキルレベルがもっと上がらないと。

 俺もまだまだだな。

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