第5話 スキルレベル上がる

「「おはよう」」


 今日も元気に納品に行った後にマリーとクランの掃除だ。


「おはよう」


 リーナさんが挨拶を返してくれた。


「みんな忙しそうだ」

「私は遠征から帰って休みだけれど、稼がないといけない人はこれから仕事ね」

「そうなんだ。通りで殺気立ってると思った。要注意な人っている」

「クランの人間はみな良い奴よ。イラスとかカチンとくる事言うけど反論しても怒らないから。そうね、要注意は5人ね。剣聖のザッグさん。アンリミテッドのリリーさん。ジュエルスターのバイリーさん。王打おうだのレイデンさん。あと納得いかないのが借金王のアカジさん」

「その5人が危ない奴らなんだ」

「いいえ、みんないい人よ。ただ実力がね。抜きんでているの。一人で都市を壊滅させられるわ」

「俺、王打おうださんに失礼な事したかも」

「たいして気にしてないはずだわ。王打おうださんは5人の中でも特に温厚な方だから」


「緊急要請。緊急要請。ロックウルフの群れが発生。Cランクは現場に急行されたし」

「あのアナウンスは何」

「ギルドからの緊急要請よ。クランのメンバーがギルドに詰めていて、美味しい依頼やこのクランでないと難しい依頼を魔道具で連絡してくるの。私、Cランクだから行かないと」

「いろいろありがと。参考になったよ」


 俺はリーナさんを見送った。

 Cランクの人間が多いのか。

 待機室はガランとした。


 あー、俺も魔獣との戦いを経験してみたい。

 リアルになったゲームは面白いだろうな。


 掃除を終わらせ、俺のスキルレベルを上げる為に何か出来ないか考えた。

 情報が不足している。


「なぁ、イラス。スキルのレベルってどうやったら上がるんだ」

「様を付けろ。最低でもさんだ」

「早く教えろよ」

「全くそんな事も知らないのか。スキルレベルを上げるにはスキルを使うか。スキルで魔獣を殺すかだ」


「俺が倒せそうな魔獣はどこにいる?」

「汚らしい小僧にお似合いなのは下水道のジャイアントコックローチとビッグマウスだな。汚水にまみれて頑張るんだな」

「やってみるよ。ありがと」

「おう、最初から、そう素直に出りゃいいんだ」


 照れた様子のイラスを尻目に下水道にやってきた。

 武器は三角に四角の持ち手を付けて、3ポリゴンで作った包丁の刃だ。

 枝を縦切りにして持ち手を挟んで縛って柄にした。

 柄もポリゴンで作れるようになりたいぜ。

 土産物に96ポリゴン使って、残り4ポリゴンだからしゃーない。


 最後1ポリゴンは炎のパーティクルを貼って光源をつけて灯りにした。

 ただね。

 これ熱くないんだよ。

 炎の形だけだ。

 それを枝に括り付け燃えているようで燃えてない松明にした。


 着替えも古着屋で用意した。

 さあ、探索だ。

 下水道は壁と通路はレンガで出来ていて中央に汚水の川が流れていた。

 腐った臭いが満ちていて、こんな所に長くいたら病気になる。

 そんな、気分にさせられる場所だった。


 カサカサとでかいゴキブリが壁を走り回る。

 沢山いるけど生理的に受け付けない。

 駄目だ。

 俺には無理。

 せっかく準備したけど、無理な物は無理。


 外に出て新鮮な空気を吸い込む。

 着ている物が臭くなった。

 この洋服はディザにとって思い出深い物だ。

 捨てるのにためらいの記憶が流れ込んでくる。


 路地裏に捨てられマリーと出会ったディザがマリーの勧めに従い、貴族の服を売った金で手に入れた古着だ。

 貴族との決別の証だと記憶が叫んでいる。

 決意の表れ、そんなところか。

 よし、洗濯してとっておいてやろう。


 謎が一つ解けた。

 貴族の服を売った代金で100日もの間生きてこられたのだな。

 納得したよ。

 さて、包丁をどうしよう。

 せっかく作ったのに。


「いた」

「マリー、どうしたんだ。急用か」

「ううん、魔獣退治に行ったって聞いたから気になって」

「魔獣退治はやめだ。臭くて俺には無理」


 本当はゴキブリが嫌だった。

 あれは嫌悪感というより恐怖そのものだ。


「ねえ、薬草を採取してみない」

「よしやるか」


 街の近くの草原で包丁は薬草採りに使われました。

 採っている草はほとんど雑草だけどな。

 素人に草の見分けなんてつかない。


 そうしたら、切った雑草をエサだと勘違いしたのかウサギが集まってきた。

 おい、後でその草を調べてもらうんだから、食うなよ。

 知った事かと貪るウサギ。

 もういいよ。


「包丁貸して」

「気をつけろよ」


 何をするのか見ていたら、マリーはウサギをグサッとやってしまった。


「にくー」


 肉だけどもな。

 可愛いとかないのか。

 マリーはしばらくウサギ数十匹と戯れた。

 そしたら、ウサギが突然、マリーから逃げ出すようになった。

 何が起こった。

 マリーにウサギキラーの称号でも付いたというのだろうか。


「マリー、ステータスを見てみろ」

「うん。ステータス。レベルが上がっている」

「おー、おめでとう」

「ディザもパーティメンバーだから上がっているかも」

「まさかな。ステータス」


 そのまさかがあった。

 俺のレベルは上がらなかったが、スキルレベルが上がっていた。

 俺の包丁で殺したという事で、俺のスキルレベルが上がったのか

 何にせよ助かる。

 マリー、グッジョブ。

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