side Y&T 1

俺は山田。ただの山田だ。


普通の高校生活を送っていたが、学校に行くと突然目の前が白くなった。


「……で…ど……する……の?」

「……でも………だ…じゃん!」

「だ………し……なの……は!?」


周りのうるささで目を覚ます。

そこにはクラスメイトたちがいて、いい争っていた。


俺は状況を確認する。


あたりは森。そして目の前には目を覚ましたクラスメイトたち。


俺が最後みたいだった。


6人足りないが、ほぼ全員ここにいる。


「どうするのよ!」

「俺がリーダーになろう!」


そう言ってクラスのトップの赤井くんが一歩前に出る。


彼はクラスの中で権力が強くイケメンで有名だったが、いじめでも有名だった。


入学初日から怪我をしている、芯望くんに絡んでいじめていた。


その様子に俺は耐えかねて赤井くんにやめたらといったが、逆に怒られてしまってそれ以上言えなかった。


俺もいじめられるのは嫌だった。


周りを見ても芯望くんはいないみたいだ。

彼にとって良かったのか悪かったのか知らないが異世界に来たんだから、いじめられてほしくはない。


幸せに生きていることを祈ろう。


「……だから、まず水を探そう!」


赤井くんの指示でみんな戸惑いながらも動き出す。


あたりを探し、川はないか木の実はないかを探しているみたいだ。


異世界物が流行っているだけあって、みんな混乱はすれど、この状況を疑事とはしないみたいだ。


それに一人のリーダー赤井くんのもとでみんなが動いたほうがまとまりはできるだろう。


俺はそう思いながら、友達の田中と一緒にあたりを散策し始めた。


空はもう、日が落ちて暗くなり始めていた。


結局何も見つからず、俺と田中は広場に戻る。


「俺らの班は川を見つけたぞー!」


赤井君が叫びながら広場にかけてきた。

その声を合図にみんなが赤井くんの周りに集まる。


「お前らはどうだ?」


俺は少しそこで驚く。

俺は彼に対していじめてる最低なやつというイメージしかなかったが、ちゃんと俺らの状況を気にして声をかけてくれている。


ただそれだけでいじめていたという事実は変わらないが俺の中で少し彼への信頼が生まれた。


「俺ら変な草を見つけた。」

「私達はきのこ。」


なにか発見があった人たちが赤井に競うように成果をアピールしている。


「やっぱり赤井君が中心だな。」

「そうだね。」


俺は小声で田中と話す。

どこへ行っても俺と田中との絆は変わらない。


「もう暗くなってきた。ここは開けているし今日はここで寝ようと思うがお前らどう思う?」


赤井君がみんなに聞く。異論はないようだ。


「じゃあ男子が中心となって寝床を作るぞ!」


集められた葉っぱや制服の上着で雑魚寝できるようなスペースを作る。


と、その時


「キャーー!あれなに!!」


一人の女子が叫ぶ。


みんなの意識がそこに集まり、みんなが沈黙する。


そこには、緑の異型な怪物。ゴブリンがいたのだ。


「おっおい、どうする?」


男子の一人が声を上げる。それを皮切りに皆が叫んだりかけたりの阿鼻叫喚が訪れる。


「おっ俺が殴る、俺に任せろ!安心しろ!!お前らは下がれ!!」


赤井君がそう叫び近くにあった石を取る。


「うわぁーーー!!」


そして現れた一匹のゴブリンに殴りかかる。


「おりゃ!うりょ!おりゃぁぁ!!」


赤井くんは何発もそのゴブリンに殴りかかる。


ゴブリンが血を撒き散らし倒れたとき、赤井くんの動きが1.2秒止まる。


「や、やったーー!!!やってやったぞ!!」


赤井くんがそう叫ぶ。


「おっしゃーー!」

「すげー赤井!」

「かっこいい!!」


などクラスメイトたちがゴブリン退治を喜ぶ中赤井くんがさらに叫ぶ。


「チート……スキル、ゲットだぜ!!」


 ◇ ◇ ◇


赤井くんは能力スキルを手に入れてから明らかにみんなを仕切るようになった。


その上、自分の仲のいい人にスキルを取得させ、陰キャたちには手助けなしやご飯削減など明らかな差別をするようになった。


俺もオタクの端くれ、異世界ものは十分予習済みなので職業ジョブ能力スキルというのは理解できた。


俺は圧倒的な陰キャではないので、最初は差別もそこまでなかったが、カースト上位が皆スキルをとった後には、田中くんと共にご飯を減らされた。


赤井くんに襲いかかった人もいたが、スキルやジョブを持っている人といない人では力に大きな差があるようで、すぐに倒されてしまっていた。


彼は殺されはしないが、ご飯を圧倒的に減らされていた。


俺たちが食べているのは、鑑定持ちの人が選りすぐんだ安全なキノコや山菜なのだが、量を減らされた彼は見るからに細くなっていた。


その姿を見たあと、赤井くんに歯向かう者は居なくなった。


それが幸したか、赤井くんたちは俺らにも歯向かわなければという条件付きだがスキルを獲得するため、ゴブリンを狩ることを手伝ってくれた。


そうして俺もジョブ『狙撃手スナイパー』スキル『遠視えんし』を手に入れられた。


山田はジョブ、『参謀さんぼう』でスキル『長考ちょうこう』にしたらしい。


一度山田とここから離れた方が良いんじゃないかと話し合ったのだが、それを赤井くんに聞かれてて逃げるなら容赦はしないと言われた。


そんな赤井くんは最近動くこともせず、ずっと作らせた椅子に座っていて、みんながとってきた肉やきのこを食べている。


彼のジョブは勇者らしいがそんなふうには見えない。どっちかと言うと恐怖で皆を支配する魔王だ。


俺は今日もウサギを狩りに行く。

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