第5話  友人と約束が出来ない・予約が出来ない辛さ 

ドタキャンが癖なのではない。病気なのだ。なんでも病気のせいにするのはズルいと思われるだろう。甘えと思われるだろう。

確かに病気ではなく、ただの面倒くさがり屋、ドタキャン癖の人もいるだろう。

けど違うのだ。理解して欲しい。


当日まで、否、ドタキャンの連絡している時ですら行きたいのだ。ただ体が動かないのだ。何も出来ないのだ。そして罪悪感に苛まれて、死にたくなるのだ。

勿論友人からの信用も無くす。そんなの嫌に決まってるじゃないか。

でも、でも分かって欲しいんだ。病気なんだ。


大人になってから、ドタキャンで男性の友人に凄く説教されたことがあり「友人なくすよ。社会的信用失くすよ」と言われて、喧嘩になった。私は涙を流していた。そんなことくらい当の本人が百も承知なんだ。彼は理解してくれなかった。

まあ、普通はそうなるだろう。

それ以来、私は誰とも約束をしなくなった。

守りたいけど、守れない約束はやはり出来ないからだ。


土日の予定は毎週真っ白だった。働いている時は週末は干物女になるので別に苦ではなかった。ゆっくり寝ていられるし。

でも早く起きれて、身体が調子よいときは「○○ちゃんと会う予定入れればよかったなぁ」と思ったりした。

知り合いから週末誘われても、毎回断った。

「なんか予定あるの?」と言われて、他に予定があると嘘をつくしかなかった。

毎回毎回断る時は辛かった。

でも、それ以上にあの罪悪感に苛まれる辛さは味わいたくなかったのだ。


友人との約束もそうだが、日常生活できついのは美容院の予約だ。今やネット予約の時代。体が鉛の様に重くてしんどくてキャンセルの電話を入れる。そして次回の予約を入れる。しかし、またその日になると動けないのだ。またキャンセルの連絡を入れる。今度は「体の調子が良くなったら、またネットから予約します」と言う。

自分ではもう大丈夫だと思って、ネットから予約を入れる。

しかし当日、また動けない。

もう電話で言い訳は出来ない。

そうすると、必然的に連絡なしのキャンセルとなり、ネットで予約が出来なくなる。

それを色んな美容院で何度繰り返したことか。

最低だ。最低な人間なのだ。.


何が辛いって、自分の存在が他人に迷惑をかけているってことだ。

自分だけなら、いくらでも苦しめばいい。

でも私が無断キャンセルすることで、お店に損失がいくのだ。社会人失格。人間失格だ。


歯医者もそう。予約しても行けないのだ。

で、よりによって行けなかった次の日は妙に体調も気分も安定したりする。そんなこんなの繰り返し。


私は今までどれだけの信用を失ってきたのだろう。


顔も名前も変えて、一からやり直したいといつも願っている。

今からでも大丈夫。変わっていくしかない。


私にできること。

それは約束をしないこと。

予約をしないこと。

ただ、それだけなのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る