秋
第44話 暴かれるのは
8月28日。
凛にわざと写真を撮らせてから1ヶ月ちょっと。
学生生活最後の夏休みはあっという間に終わり、登校日がやってきた。
高校生活はもはやラストスパート。
ほとんどが部活を引退している3年生は、10月の学園祭『きらめき祭』を最後の締めくくりとした後、一斉に受験モードへと突入していく。
その後は受験まで主だったイベントはない。
文字通り勉強一筋というわけだ。
例に漏れず、俺は進学する予定がないので暇である。
…もちろん、それは表向きの話で、裏では色々と忙しいのだが。
「あっという間だったなぁ…」
「もう。新学期早々からそんなん表情じゃ、ちゃんと卒業できないわよ円二」
まだまだ夏の暑さを蓄える空を眺め、とぼとぼと学校に向かう俺の隣で、結愛が呆れた表情を浮かべた。
「楽しい夏休みだったけど、なんだか名残惜しくてな。お金はすっからかんになったけど」
「それは、そうかもね。海にも行ったし、お祭りにも行ったし、鮎川先輩や原田先輩とも遊んだし、楽しかったのは認める」
むむむ…とした表情を浮かべる結愛。
いつものように西洋人形のような可憐さを振りまいているが、少し背が伸び、胸も大きくなったようだ。
ナチュラルメイクもぱっちり決まって、幼い少女には出せない色気を感じてしまう。
立派な大人の女性に近づいてる…ってのは、口に出すとキモいしれない。
「でも、円二にはもっと胸を張って欲しいの。あたし、円二のおかげで、今年の夏は人生で一番楽しかったから。だから、その…あ、あり、がとう…」
くそ。
相変わらず俺をドキッとさせるはにかんだ笑顔だ。
「こ、ここまで言わせたんだから、円二も元気出してよね!」
「ふぅ…分かった。今から元気出していくさ。ツンデレ義妹のためにな」
「つ、ツンデレじゃないし!」
軽口を叩き合ってると、2人の同級生が後ろから声をかけてくる。
「円二さーん!結愛ちゃーん!おっはよー!」
ポニーテールを揺らし、胸を揺らしながら走ってくる鮎川さん。
「円二くん。結愛さん。おはよう」
ボーイッシュで爽やかな笑顔が印象的な原田さんだ。
連絡は取り合っていたけど、直接会うのは夏祭りに行った2週間ぶりだろうか。
「おはよう、鮎川さん、原田さん…って、2人ともちょっと日焼けしてないか?」
「ああ、これ?ぼくと原田さん、昨日ちょっと用事があったんだ。これだけ日焼けするとは思わなかったけど」
「そうなの〜!なんだったら、美也と原田さんの日焼け痕、見せちゃおっか?」
「鮎川さんは相変わらず大胆だね。でも、円二くんなら、いいかも…」
巨乳ポニーテール美少女とボーイッシュ美少女は、ブラ紐を大胆にずらした。
「こ、これは…!ブラ紐で隠れた結果肌色になった部分と、それ以外の焦茶色の部分のコントラスト…!!!」
「えへへ〜円二くん、いやらしい顔してる〜」
にやにやと笑いながらも大胆に谷間を見せつける鮎川さん。
「ぼ、ぼくも女の子なんだからね…」
恥じらいながらも、ちらりと肌色の部分を見せてくれる原田さん。
「眼福とは、まさにこのことかっ!」
思わず目が釘付けになってしまうがー、
「がるるるる…」
「あ」
「円二…ちょっと、こっちに来なさい」
「…はい」
義妹に首根っこを掴まれて引きずられ、至福の時は終わりを告げるのであった。
****
夏休みを終えたばかりの学校は気怠げな生徒が半分、きたる学園生に向けて張り切っている生徒が半分と言ったところだった。
明智の姿はない。
東大に行くったって登校しないとダメなはずだが、まあ考えがあるのだろう。
次に会った時は、ナイフに襲われた時の対処法レクチャーしてくれたお礼をしなきゃな。
そんなことをぼんやりと考えながら、あまり頭に入ってこない授業を聞き流し、午前中はあっという間に過ぎていく。
午前中の授業が終わり、昼休みになった後ー、
結愛、鮎川さん、原田さんと計4人で集まった。
場所はいつもの屋上。
夏の暑さも多少緩和されて過ごしやすい空間で、お昼ご飯を食べながら作戦会議が始まる。
すなわち、凛に対する復讐を協議する会議だ。
「さあさあ始まりました静谷凛さんに対する復讐を協議する会(仮)!司会進行役はこの私、鮎川美也が務めさせていきます〜〜〜!ぱちぱちぱち〜!」
「あはは…そのテンションで行くんですね、鮎川先輩」
「ダーティなことだからって湿っぽいテンションじゃだめだからね!そうでしょ、原田さん!」
「うん!それぐらいガシッと行こう!」
お前らな…と言いたいところだが、俺自身が発案者なので仕方ない。
とりあえずここ最近で起こったことを全員に報告する。
「昨日も凛と電話はした。聞く限り、徐々に俺の言葉を信じはじめている。もう少しだろう」
「じゃあ?作戦通りに進めるんだね、円二くんは」
「ああ。そうじゃないと…原田さんも報われないだろ」
「円二くん…ありがとう。ぼくのことも考えてくれて」
ーあははははは…そんなに寄りを戻したいなら…条件があるわ。
ーなんだい?なんでもいってくれ。おれにできることならなんでもする。
夏休みを楽しむ傍ら毎日続けた、かつての幼なじみとの電話。
ゴミ男。
裏切り者。
恥知らず。
ストーカー。
最初は俺を罵って取り合わなかった凛の態度が変わったのは、夏休みが終わる3日前。
ーあの女…結愛を破滅させる写真を私は握ってる。それを、インターネット中にばら撒いて!
ーそんなことをするひつようはない。
ーえ?
ーもっといいぶたいがあるじゃないか。
ーいい舞台…?
ーああ。
ーがくえんさいで、ぜんこうせいとのまえでばらまけばいい。
ーえ…?
ーもちろん、おれといっしよに。
ー…くくくくく。あははははははっ!良いわねぇ!そうしましょう!その時…私は学校に帰ってくるわぁ!
もちろん、そんなつもりは毛頭ない。
学園祭で暴かれるのはー、
凛の過去の悪行全て。
****
相変わらず癖の強い作品ですが、もし気に入れば応援や☆、フォローを頂けると嬉しいです!遅ればせながら第7回カクヨムWeb小説コンテストにも応募いたします。
新たに「☆1000で電子書籍化」という目標を掲げることにしました!今後もコンスタントに更新しますので、よろしくお願いします!
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