第5話

「優花が……死んだ……?」


 待ち合わせ場所で待っていても来なかったので仕方なく学校に行った。そこで知らされた事実。俺は理解が出来なかった。


「知らなかったのか? あぁ、そういえばお前も入院してたな。なんか、神社の階段から落ちて」


 それは知ってる。


「救急車に運ばれて」


 それも知ってる。


「一命はとりとめたけど、脳死状態だったらしいんだ」

「は? はははっ、冗談はよせよ……」

「いや、冗談じゃない。そんなつまらん冗談をかますほどクズなつもりは無い」


 嘘だろ……俺があの時、拒絶したせいで……なんで、なんで拒絶なんかしたんだよ……


「今日、告別式らしいぞ? 来るのか?」

「当たり前だ! ……すまん」


 声が大きくなってしまった。それくらい心が揺さぶられていた。


「気にすんな。彼女がいなくなって悲しいのは分かるから」

「すまん」


 その日が自習で良かった。何もする気になれなかった。俺はただ窓の外を眺め続けた。


 夜


 告別式には様々な人が来ていた。あんまり覚えてないけど、ざっと百人はいた気がする。笑顔で立てかけられている遺影をただひたすら眺めてた。


 帰る間際、


「彼氏くんよね?」

「……はい? 一応僕ですけど……」


 優花のお母さんに呼び止められた。なんだろうか? 殴られるのかな? 分からないや。


 渡されたのは一冊のノートだ。手帳だろうか? かなり使い込まれたのだろう。だいぶくたびれている。


「日記帳って言っていたわ。あの子がいつも『もし私になにかあったら渡して』って言っていたの。持って帰って読んであげて」

「……はい」


 俺はその日記帳を片手に家に帰った。家についてすぐ自分の部屋に上がって日記帳を開いた。そこには優花の文字がたくさん、たくさん踊っていた。日付は付き合い始めた日からになっていた。


『十月三日

 今日は幸せな日だった。前から好きだった人と付き合えることになった。かっこいい彼の顔が間近で見れた。綺麗な星空が祝福してくれてるみたいだ。あと、彼の心臓は悪いらしい。とてもショックだったけど、好きって気持ちには嘘をつけなかった』


 そんな風に思っていてくれたんだ。改めて優花の愛の大きさを実感した。


 そこから2〜3日ごとに書いてあった。優花らしいなって思うと同時に寂しくなった。もう、会えないのだと。


『一月十日

 なんか、あの神社に変な噂があるらしい。多分、嘘なんだろうけど信じてみようと思う。今朝、死んじゃう夢見たから……もし、君が今読んでるなら始まりの神社の階段の後ろに仕込んでるから来てみて』


 俺は今が夜の10時をまわっていることなんて気にせずに日記帳を持って駆け出した。


 



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


次の話で完結します!

ここまで読んでいただきありがとうございますっ

どうか最後までお付き合いください。

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