第17話 図書館でばったり③
お互いがオススメした本を読んでいると、いつの間にかお昼になっていた。
「もう、お昼か~」
「みたいですね」
「お腹空いたな~」
「ですね」
「ご飯行かない?」
「いいですよ」
「え、いいの!?」
「だから、ここ図書館ですってば」
「ごめん」
真帆は両手を顔の前で合わせて小声で謝った。
「だって、まさか一緒に行ってくれるなんて思わないじゃん」
「別に行かない理由はないですからね」
「そうと決まれば、どこ行こう~」
「真帆さんは何が食べたいんですか?」
「う~ん。ラーメンとかは?」
「僕はいいですよ」
「じゃあ、決まりね!」
ということでお昼ご飯はラーメンに決まった。
そう言えば、この辺に美味しいラーメン屋があるなと正輝は思った。なので、それを提案することにした。実は、前から気になっていたラーメン屋で一人で入るには少し勇気がいるような場所だった。
「真帆さん、行ってみたいラーメン屋さんがあるんですけど、よかったらそこに行きませんか?」
「行く!」
体を少し乗り出して即答した真帆。その勢いに乗って、髪の毛からいい匂いがぶわっと香ってきた。
「それじゃあ、行こう!」
「ですね」
正輝は読みかけの本に栞を挟むとカバンの中に入れて立ち上がった。真帆も同じように本に栞を挟むと肩から提げていたショルダーバックの中に入れた。
「可愛い栞使ってますね」
「気づいた?」
「はい」
「昔からずっとあの栞使ってるんだ。可愛いよね」
「そうなんですね。もしかして、大事なものですか?」
「よく分かったね。実はそうなんだよね」
真帆は栞のことに気づいてくれたことが嬉しいようで、はじけるような笑顔を正輝に向けた。
真帆は一旦しまった本を取り出して、正輝に栞を見せた。
「この栞ね。おばあちゃんがくれたんだ。もう、何十年前になるんだろう。私が中学生の時から、ずっと使ってるんだよね」
「それは凄いですね」
正輝が使っている栞は書店で買ったときに貰えるやつでなんの思い入れもないものだった。
それに比べて真帆の栞は何十年も前におばあちゃんから貰ったもの。きっと、その桜の押し花が入ってる栞には数々の思い出が詰まってることだろう。たくさんの本に挟まれてきたことだろう。
「これが、おばあちゃんとの最後の思い出だから」
「……そうなんですね」
真帆は手に持っているその栞を思い出を思い出すかのように眺めていた。
そんな真帆のことを見て、正輝は聞いてはいけないことを聞いたかなと思って少し暗い顔になった。
「もう、そんな暗い顔しないでよ」
「なんか、すみません」
「別にいいよ。おばあちゃんが亡くなったのもう何年も前のことだから。今は、もう悲しみは乗り越えたつもり」
「……」
「ほら、そんな顔してないで、ラーメン食べに行くよ! 美味しくなかったら許さないからね!」
「それは、保証しますよ」
真帆はいつものように正輝の腕に自分の腕を絡めてきた。
そして、二人は図書館を後にすると、図書館の近くにある絶品ラーメンが食べれるという噂のお店へと向かった。
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