第30話 すっからかん
「おばちゃん!俺ウゴウゴ焼きね!」
レイが声を張る。
ウゴウゴ焼きは、この辺りで採れる砂蜥蜴の丸焼きらしい。
蜥蜴としては別の名前があるらしいが、なんでも死ぬ際にウゴウゴ鳴く事からこの辺りではそう呼ばれているそうだ。
「あ、俺もウゴウゴ焼き!」
「あたしもウゴウゴが良い!」
「俺も!」
次々に少年少女達が手を上げて、定食屋のおばちゃんに注文しだす。
その数、ざっと20人。
……なんでやねん。
レイの頼み事とは、彼の仲間にも食事を奢ってやって欲しいという物だった。
私はそれに気前よくオーケーを出したのだが……少し多すぎじゃね?
2-3人かと思ってたら20人とか、マジ勘弁して。
「あいよ!お待ち!」
次々と蜥蜴の丸焼きが運ばれ、子供達は狂った様にそれに貪りついた。
凄い食欲だ。
ああ、私のお小遣いが減っていく……
「ねぇちゃん!ありがとな!」
此処にいる20人は、全員この街で暮す浮浪児達である。
その大半は、10歳にも満たない年齢の子達ばかりだ。
「ま、まあこれぐらいどうって事無いわよ」
彼女達は集団で生活しており、レイはそのリーダーだった。
今日の置き引きも、仲間の子達を食べさせるためにやった事の様だ。
「しっかし、よく食べるわねぇ」
凄い勢いで蜥蜴を食べ尽くした子供達は、次々と追加注文をしていく。
こりゃお金は残りそうにないわ。
「遠慮した方がいいかな」
レイが申し訳なさそうに聞いてくる。
「別にいいわよ。気にせずじゃんじゃん食べなさい」
私は引きつりそうになる頬を鋼の意思で抑え込み、笑顔で答える
私も小さな頃は貧しかった。
何時も兄弟で仲良く……うん、仲良くはないな。
いつも食事は醜いく取り合いだった事を思い出す。
まあそれはこの際どうでもいい。
とにかく、うちもド貧乏だったので、飢える事の辛さはよく知っている。
「ほら遠慮しないで、あんたもお代わりしなさい」
「うん!」
ま、仕方ない。
お腹を空かせて飢えてる子供達が目の前にいたんじゃ、ほっとくわけにもいかないからね。さらば私の豪遊プラン。
「おねぇちゃんありがとう!」
「「「ありがとう!!」」」
食事を終えた彼らは、塒へと返って行く。
私は手を振って彼女達を見送った。
手持ちはすっからかんになってしまったが、子供達の屈託のない笑顔を見れたので良しとしよう。
「よし!帰ったらお嬢さまに相談するか」
言っておくが、お金の無心ではない。
レイたち浮浪児達の事についてだ。
その際「人のために自らの身を削るなんて感心ね」といって、お嬢様から追加のお小遣いを手渡されれば、それは快く受け取るつもりではあるが。
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