第2話
「おい」
さっきから、彼女が。底の抜けた俺の靴を離そうとしない。
「捨てるから。離れなさい。犬じゃないんだから」
「いやだ」
「底の抜けた靴だから。もう使えないから。捨てるからね」
「だめ」
「なんでだよ」
「わたしにとって、手離したくないものだから。いちばん大切なものだから」
「いや、靴だけど。ただの靴」
「だめ」
「えええ」
なんでよ。
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