地上街

概要

倫国の東端と中央との間にそびえる山岳地帯のほぼ中心、山に囲われ道もないような谷間に人知れずに築かれたスラムの総称。


森からぶっつりと途切れた平地に豚や鶏が放し飼いにされた農場、その向こうには木や石で作られた小屋が並び、その奥にはもう少し立派でまともな建物が、そして中心には廃墟のような城が、無秩序に、建築、改築、増築され続けている。


湧水があるため水は豊富で、周囲の山からは野生動物の他に山芋、キノコ、木の実、筍、どんぐりなどの食料も手に入るため、短期間であれば自給自足も可能。


また小さいながら鉄鉱山もあるらしく、細々と鍛冶屋が鉄を打っている。


住民の大半は他のスラム出身で、その多くが借金返済のため、ここに移り住んできた。


また支配階級も存在し、見な外側ではマフィアや強盗、闇金など裏稼業出身者ばかりが集まっている。


みな、金に汚いが、少なくともことが公になる前までは人間だった。


事の発端は二十年前からゆっくりと進められてき倫国の国土全土を網羅する街道網構築計画、通称『大街道計画』が漏れ出たところから始まる。


その中の難所、東端方面と中央とを結ぶ街道計画は、間に険しい山々がが聳えていて交通の便が悪く、物流はそこら一帯を迂回しての遠回りを余儀なくされていた。


その無駄をなくそうと、その中心を突っ切る形で街道を、との陳情は長年上げられてきたが、予算と工期の問題により長らく後回しにされてきたが、現皇帝の許可がついに出て、計画は動き出した。


そうして予算と人員が集められ、地形観測も終わり、ルートも決定、いよいよ着工が始まって山一つを超えたところで、このスラムは発見された。


そこに住む住民たちはことごとく土地の所有権を主張し、立ち退くには法外な、彼らには相応の、立退料を求めてきた。


元より、そこに人がいるとは初耳の計画、今更道を変更するわけにもいかず、かといって彼らの要求を呑むわけにはいかず、交渉は難航、そうしている間にもスラムの住人は増え続け、中には城塞や罠を仕掛けて徹底抗戦の構えまで見せるようになった。


そんな折、最後に交渉に向かった担当官たちが戻ってこなかった。


そうなんの疑いありと派遣された捜索隊も、事件性ありと出動した地方軍も同様、わずかに発見できたのは肉片としか呼べない亡骸の欠片と、精神を崩壊させた幾人だけだった。


何かが起こっている。


そうわかっても調査は遅々として進まず、そうしてる間にも立退料目当ての住人は次々とやってきては、音信不通となっていく。











ネタバレとしては、街道計画のもう一つの目的、物流だけでなく、大地を流れる『気』の流れを意図的に操作し、東から中央へ、そして全土へと広げることで無病息災、商売繁盛、豊作豊漁を狙う風水的事業でもあった。


しかし、その半ば、東側の気が流れるど真ん中にダムのようにスラムが作られた結果、集まる気は氾濫し、その周囲に過剰な『陽』の力が溢れて、精神を、そして肉体を変異せしめた魔境にと変貌していた。


解決方法はせき止めている物、あるいは人をそこから退かすことだが、変異した後もこの土地への執念は強く残っており、一筋縄ではいかない。


風水的事業はトップシークレットなため、そこから派生した問題に適切に対応できず、問題は刻一刻と悪化している。


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