第16話 名前廻戦の果てに

「娘・息子が生まれたら、名前どうしよう。」

『彼氏もいないのに気が早過ぎない?』

「夢見たっていいじゃん!」

『夢は覚めるものよ奈緒。』

「違うもん!夢は追い続けるものだもんね!」

『少年誌の主人公みたいなこと言って。』

「最近さぁ、男の子だったら"流星"とか"宇宙(そら)"とか格好良い名前多くない?」

『多いわね。』

「でも、親も相当度胸いるよね?"流星"って名前付けたのに陰キャに育った時の息子の気持ちよ!陰キャなのに流星って!」

『流星って名前なのに、太ってたりしたらね。早そうな名前なのに鈍足って馬鹿にされそうね。』

「そうなの!格好良い名前付けても息子も良い迷惑だよね!自分の名前が重荷になっちゃうし、名前負けしちゃうの!」

『私も小学校の同級生に"細子(さよこ)"って名前の子がいたけど、言っちゃ悪いけどメタボでね。"太子"の方がしっくりくるなーって思ってたわ。』

「そうなんだよね。名前つけるのも慎重にいかないとね。」

『奈緒は今世では無理だから考える必要ないわよ?』

「ちゃん美優!私にブスキャラを定着させようとしてるでしょっ!」

『そんな事ない…… 

………

………

わょ……。』

「凄い間があったけど!!!」

『でも、そしたら、娘が生まれたらなんて名前にするの?』

「甘い香りがあって、高貴なイメージがつくように、"甜瓜(メロン)"かなぁ。」

『メロンの漢字、初めて見たわ。』

「でも、問題は小学校のテストとかで自分の名前書くのが面倒だよね。」

『まず、小学校で習う漢字にしようよ。しかもこれ当て字でしょ?メロンって。』

「あと懸念すべきは、苗字が"栗"って人と結婚したら、栗甜瓜(マロンメロン)だよ?どうしよ!?」

『何で苗字がマロンなのよ、栗(くり)で良いじゃない。』

「"甜瓜(メロン)"ちゃんは良くないなぁ。なら、蜜柑とかにしようかな。」

『でも、苗字が夏の人と結婚したら絶対"夏蜜柑"って馬鹿にされるわよ?』

「んー、難しいなぁ。フルーツ系の名前は無理かなー?」

『お花の名前とかどう?』

「良いね!美しい感じでるね!彼岸花とかにしよ!」

『なんで数ある花の中で彼岸花を選ぶかねこの子は…。』

「誰も近づけない感じがして良いかと思ったのに。」

『まず有毒植物だから。』

「お、良いね!ツンデレって感じがするね!」

『ツンの殺傷能力高過ぎない?』

「えー、じゃあ薔薇とか?」

『画数問題が出てくるわよ!』

「野薔薇とかどう?」

『話聞いてる?しかも"野薔薇"って。金槌と五寸釘を使った田舎出身の呪術師みたいな名前じゃない。』

「もうー。ちゃん美優は細かいなー。じゃあ女の子の話題はやめて、男の子が生まれた時の名前を考える方向にしよ!」

『奈緒は男の子が生まれたらなんて名前付けたいの?』

「"悟(さとる)!!!」

『ねえ、完全に呪術廻戦に引っ張られてない?』

「最強の呪術師になってもらいたいよね!」

『うん。現代に呪術は必要ないわよ?』

「いや、私達は既に呪われてる!"流星"とか"大和"って名前が付いてるからルックスが良いってハードルを上げてしまう固定観念よ!これこそ呪いだよ!」

『奈緒、大丈夫?いや、大丈夫じゃないわよねこれ。』

「奈緒って名前はありきたりじゃん?私も野薔薇とか良かった!」

『漢字で書けないでしょ?何なら"野"も書けないでしょ奈緒は?』

「ちゃん美優ぅぅぅぅーー!私のこと舐めすぎだよ!」

『特級呪霊みたいな顔して何言ってるのよ。』

「誰が特級呪霊じゃいっ!五条先生に殺されてやろうか!!!」

『どーいうツッコミよ!!!」

「ちゃん美優、やっぱり私のことブスキャラにしようとしてるよね!」

『そ、そんな事……

………

………

ないわょ。」

「なんで少し間があるの!!!煮え切らないなぁ!」

『まぁ、"悟(さとる)"は良いと思うわよ。覚えやすいし。』

「モテモテだね!」

『問題は奈緒の息子って事ね。ルックスが名前に追いつかないから…。』

「ねえ、もう遠回しで私のことブスって言ってるよね?」

『"花御(はなみ)"なんてどう?奈緒の息子にとって素敵な名前じゃない?』

「特級呪霊の名前だよね?馬鹿なのちゃん美優?」

『奈緒ってほら、特級呪霊じゃん?必然的に息子もそうなるじゃない?』

「よし、今世は子ども作るの諦めるね!」

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