02_ギャラリー

電車を降り、駅を出て商店街の通路を通り抜け、踏切を渡り、国道を跨ぐ歩道橋を降りたすぐの所にそのギャラリーは有った。想像していたより小さい。

実は僕はギャラリーと言われる所に来たのは初めてで、頭の中では美術館のような建物を想像していたのだけど、見た所その建物は昭和の昔に出来たらしい木造2階建ての、店舗が左右二つで繋がっているものだった。二階には窓が有り、住居になっているようだ。


左隣の店舗には、窓に物件の間取りを隙間なく貼った昔ながらの不動産屋が入っている。これを見ると多分、右側のギャラリーも元は何か別の店だったのだろう。


透明なガラス製のドア越しに中を覗いて見ると、白い壁に、黒い大きな絵が何枚かかかっているのが見えた。時刻は昼の12時を過ぎていて確かにオープンの時間のはずなのに、中には誰もいなそうだった。


ここは呼び鈴を押して入るのだろうか? でも、見回してもそんなものは見つからない。勝手に入っても良いのだろうか? 僕はもう一度、ジャケットのポケットに入れておいた案内を取り出し、黒い表面が表に出てきたのでひっくり返して開催の日付と時刻を確かめた。確かに今日の昼からだった。


アルミの棒で出来た縦長の取っ手をそっと押し、ドアを開いてみた。中は暖房が効いていた。絵を照らす天井のスポットライトが点灯している。足を入れて中に入ると、ドアはバネの力でゆっくり自動的に閉まった。ドアが閉まると表通りの車の音は小さくなり、代わりにエアコンの送風音が聞こえる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る