第2話 そうだ、スライムでオナホを作ろう1
世の中には魔獣が溢れている。
魔獣とは魔力によって蠢く理外の獣であり、そして人類を襲う危険な化け物だ。
どのくらい危険かというと、魔獣が発生し始めて人類の生存圏が6割ほど奪われ、だいたい千年近く、取り返せていない状況が続くくらいには脅威な存在だ。
そして魔獣の大量発生、変種の出現等の
まあ現状、すぐに滅んでしまうほど、人類は切羽詰まっているわけではない。
魔獣除け、従魔士による魔獣の間引き、あるいは防壁を築いたり、魔獣への対策をしっかり行なっている場所はそれなりに安全な生活が約束されている。
万が一である大災害が起こらない限りは、まあ平和に暮らすことだって可能なのだ。
まあ僕の場合は、その万が一が起こったわけだが。
いやぁ、自分の住んでいる街が地図上から完全消滅したのは衝撃的でしたね。
それなりに栄えていた大きな街だったが一晩で更地である。
運よく助かったが、視界には破壊されつくした建造物、漂う死臭、そしてぶち撒かれた人肉ミートソースを見せつけられれば、この世界の在り方を嫌でも思い知らされるというもんである。
この世界の命は軽い。
この一言に尽きる。
弱いものから死んでいく、力がなければ抵抗すらできない。
そんなこの世の無情なルールから、せめて最低限の身を守る力が欲しい、そう考えた僕が
従魔士とは、魔獣を従える者。
曰く、毒を以て毒を制す。魔獣の脅威をもって、魔獣を倒すために戦場を渡り歩く職業である。
魔獣を扱うため、社会的な地位は低い嫌われ者であるが、多くの国家や都市の防衛戦力として扱われるほどにその存在は大きい。
魔獣を従えるという前提が付くが、それさえクリアすれば、魔獣という戦力が手に入るのだ。
リスクはあるが、基本的にテイムした魔獣はどんな命令でも聞く。自分に従順な戦力を確保できるという事実は非常に魅力的だ。
おまけに従魔士は仕事を斡旋してもらえる上に、国からも様々な支援が受けられる。
ならない理由がない。
というか従魔士になれなければ死ぬ。
住んでた街が滅んで両親も死んでしまった上に子供である。後ろ盾もなければ金も無い。
自分で金を稼がなければ待つのは餓死である。生計の目途も立たないのに強さがどうこうとか言っている場合じゃねぇ。
血と魔力で魔獣と魂を繋げるやら、失敗すれば死ぬやら、ヤバ気な言葉がいくつも出てきたが、それらは必要なリスクと割り切って僕は従魔士になることにしたのである。
***
結論から言えば、従魔士にはなることが出来た。
従魔士ギルドから仕事を受注できるようになったし、国からの支援を受けられるようにもなった。
しかし、一つだけ問題がある。
テイムした魔獣がスライムなのである。
より正確に言うとスライムしかテイムできるモンスターがいなかった。
本当はメジャーな魔獣である魔狼系や妖鳥系を狙っていたのだが、僕の魔力が少なすぎてテイムに失敗するとギルドの職員に止められてしまった。
ちなみにテイムに失敗すると、そのままテイムしようとした魔獣に襲われて死ぬ。
「困った、困ったぞ.........」
何が問題か。
このスライム、とにかく弱いのだ。
今まで従魔士という分野に触れたことのない僕でも知っているくらいには弱い。
どこにでもいる魔獣だし、見た目通り危険度なんてないに等しい。
まだ街が滅んでいない頃、道に落ちていたスライムを拾ってボール代わりに投げて遊んでいたくらいには無害だ。安価な食材としてスライムゼリーにしておやつに出されるくらいには、弱い魔獣だった。
戦うことが仕事の従魔士にとって致命的である。
「食材じゃ戦えないんだが......?」
手に納まるサイズの小さな相棒をムニムニと握ってみるが、帰ってくる反応は無だ。
テイムした魔獣とは感覚共有できたり、感情を通わせたりできると聞いたが、マジでなんの感情も伝わってこない。
どうしよう。
難度の低いゴブリン討伐の依頼も受けられない。
というか当初の目的である「強くなる」が達成できていない。
「外部の知恵に頼ってみるか.........」
従魔士には必須と言われたので、なけなしの金で購入した携帯端末を取り出す。
起動するのは、従魔士のために作成された情報共有アプリだ。
魔獣の分布区域や生態情報、従魔士としての魔獣の運用法、依頼の受注等、おおよそ従魔士に必要なサポートをしてくれる非常に助かる機能がある。
「魔獣解説」の項目を開き、スライムの情報を漁る。
「魔獣の詳細は___知ってることしか書いてない。なら、運用方法は.........?」
____ダメだ。
概ね弱いという事実しか書かれていない。
というか、全体的に皮肉られた感じで書かれているのは気のせいだろうか。
まあ、ここまでは想定内だ。
次にアプリに設置されている掲示板を開く。
従魔士同士の情報交換、模擬戦闘のセッティング、仕事のメンバー探し、新人へのアドバイス、ただの暇潰し、わりと何でもできる会話機能を使って、スライムの情報を集めることにする。
まあ、あまり期待はできないが有用な情報が見つかれば儲けものだ。
~~~
急募:スライムで有用な運用方法について。
1:『スライムテイマー』さん
ランクE
スライムをテイムしました。
現状、戦う手段が見いだせないので、スライムで役立つ情報かアイデアをください。
できれば戦闘面で、ゴブリンと戦えるぐらいには強くなりたいです。
スライムの大きさは拳大です。
2:紅蓮さん
ランクB
新人か! 地獄の従魔士界隈へようこそだ!
戦闘面での情報はないが、スライムは食用の他にポーションの原料になる! 安いがギルドが買い取ってくれるぞ!
3:粗大さん
ランクB
歓迎しよう! 盛大にな!
戦闘面での情報はないが、確かスライムの従魔士は希少過ぎて歴史上で片手で数える程しかいないぞ! つまり新人がスライムの従魔士の第一人者だ!
4:ドラグーンさん
ランクA
命は大事にして行け。死ななければ全てが安いぞ。
戦闘面での情報はないが、アイツらは与えた環境や食物で特徴的な成長をするぞ。まあ鉱物系や毒系のスライムがそれだな。
スライムで戦う方法は考えてみよう。
5:触手使いさん
ランクS
スライム使いとは珍しいな。
戦闘面での情報はないが、新人が男ならアイツをオナホールにすると気持ちがいいぞ。
6:ドーンさん
ランクC
草
7:ドラグーンさん
ランクA
触手使い。それは本当に必要な情報か?
8:触手使いさん
ランクS
新人には少しでも情報が必要だろう。
ふざけてないからな、これは実体験に基づいた情報だ。
だから怒らないでください。
9:DEMONさん
ランクC
冗談じゃないのか.........
10:薔薇さん
ランクB
これが世界最強の従魔士の一人とか、人類の未来は暗そう。
あと新人は毒系スライムに育成できれば、ゴブリンぐらいは毒で倒せるんじゃないか?
まあ近付くまえに死にそうだが。
11:紅蓮さん
ランクB
話を戻すが、ひかえめに言って無理難題だな!
スライムが戦えるイメージが浮かばん!
が、大量の魔力を
12:二股さん
ランクC
そもそも支援するだけの魔力もないのでは?
スライムとテイム成立する魔力量って、辛うじて魔力があるってレベルですよ。たぶん
大量に魔力ポーション飲み続ければ話は別ですけど。
13:ドラグーンさん
ランクA
中毒で寿命が縮むからやめておけ。
知り合いが一人それで死んでる。新人なら財布的にもやさしくないしな。
すまない、戦う方法は投げつけるくらいしか思い浮かばなかった。
14:『スライムテイマー』
ランクE
魔力をどうにか出来れば戦える可能性はあるという事ですか?
15:ひょうすべさん
ランクA
あいつら動くのが致命的に遅いからな......。
素早さが上がれば多少は死ににくくなるだろう。
育てて大きくなれば、ゴブリンの顔に張り付いて窒息とか狙えるんじゃないか?
......肝心の魔力をどうにかする方法を思いつかないが。
16:修羅さん
ランクB
まあ最初はスライムを大きく育てるか、数を増やすかすればいいんじゃないですかね。スライムは気分で餌食わないし、分裂できないしで養殖できなかったけど、テイムしてるならそれも解決できるでしょ。
スライムの納品依頼はいつでもあるし。
単価は安いけど継続的に売れればそこそこの値段にはなるぞ。
17:薔薇さん
ランクB
スライムの養殖か.........。
ポーションの原料なことも考えると、上手く増やせれば一儲けできるか?
18:ドーンさん
ランクC
いうてスライムが原料になるってだけで、ポーション原料は
供給も安定してるし、よほど質のいいポーションがスライムから作れない限り、儲けるのは難しそう。ポーションの作成も技術と材料が必要だし、新人が急に始めるには厳しいと思うよ。
19:DEMONさん
ランクC
最初は生活を安定させるためにできる事をするしかないと思うぞ。
どうしても強くなりたければ、生活に余裕が出てから育成に専念するといい。
まあスライムは群体型の魔獣だから、増やしたスライムも命令を聞くはず。そんなに維持費もかからないだろうし、とりあえずは数を増やしてみればいいんじゃないか?
~~~
「.........すぐに戦力にするのは無理そうだな」
やはりというか、スライムをテイムした従魔士はいないらしい。まあ、冷静に考えれば当たり前である。
一般家庭の食卓に並ぶような魔獣で、わざわざ戦場に向かおうとする人間なんてそうそういないだろうし。
まあ望みの情報はなかったが、思った以上に役立ちそうな情報や意見が手に入ったとは思う。
掲示板に礼を書き込んでアプリを閉じる。
うーん、とうなりながら考える。
僕はどうしても力が欲しい。
強く在ること、これは絶対に譲れない条件だ。
弱ければこの世界では生き残れない。そして強さには相応の安心と安全が付いてくる。暴力という純粋な力のみが魔獣への抵抗を可能にする。
ただし相棒がスライムであるため、強くなる手段が見つかっていない。すぐには達成できない以上、現在の優先度は下がる。
であれば、次に必要なものは何か。
「.........金だなぁ」
お金だ。
お金が欲しい。
現状、僕は金銭面において余裕がない。
死んだ家族の金でギリギリの生活しているのだ。もうしばらくの余裕はあるが、あとひと月もしない内にそれも尽きる。
とにかく金を稼ぐ必要がある。
しかし、従魔士の稼ぎの主になる戦闘系の依頼を受けることが出来ない。
受注自体は可能かもしれないが、魔力のない人間とスライムで倒せる敵はほとんどいない。何度かは上手くいくかもしれないが、いずれ限界が来るのは目に見えている。
故にスライムを養殖し、納品することで、安定して収入を得る必要がある。養殖できるかという点に不安が残るが、そこは実際に試していくしかないだろう。
テイムしているという強みと、スライムの生態を考えれば不可能ではない筈だ。
ただし、ただ納品するだけでは大した金額にならない。どんな命令も聞くスライムという、僕だけの強みを生かす必要がある。
「そうだ.........!」
電撃の如く頭の中を一つの閃きが走り抜ける。
ふざけているとしか思えない、だが成功すれば金銭面の問題を一気に解決できる、間違いなく僕の中で最良の一手。
僕の脳内では、掲示板に書き込まれた、ある従魔士の一文が駆け巡っていた。
______オナホールにすると気持ちがいいぞ。
「そうだ、スライムでオナホを作ろう」
僕はスライムでオナホ―ルを作ることにした。
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