そうだ、スライム(魔獣)でオ○ホを作ろう
赤雑魚
第1話 スライム解説書
『スライム(原種)』
種:粘獣種
分布:世界中
群体型
『魔獣解説』
いろんな意味で有名なモンスターだ。
ぷるりとした半透明の流動体に小さな核を浮かべた、魔獣の中でもトップクラスに手抜きデザイン_______否、シンプルの究極系と言える姿を知らない人間は、とんでもない箱入りお嬢様か記憶喪失の人間くらいではないだろうか。
なにせ世界中に分布しているのだから、見たことがない人間の方が稀である。
なにせ人の住む場所に生息するのはもちろんのこと、湿地、雪原、溶岩地帯、毒沼、砂漠、鉱山、深海、禁忌領域、果ては宇宙空間にまで存在が確認されているという、呆れるほどに広い分布範囲を持っているのだ。
他に住みやすいところがあるだろうにと思わないでもないが、当のスライムたちは何を考えたのか過酷極まる環境の中で居座ることを選んだ。耐熱、耐冷、耐毒.........とにかく、場所に応じた耐性を獲得し、様々な環境に適応したのである。
強力な魔獣も避ける極限の環境ですら適応する生存能力、住めない場所が存在しないが故に「どこにでもいる」のがスライムというモンスターなのだ。
おまけにかなりの悪食。
ごく少量ずつではあるが、取り込んだものを魔力に分解して吸収する上に、一定以上の大きさになると分裂して増える。
数百度の高温、絶対零度、猛毒、真空、あらゆる環境で生存する能力は、天変地異を巻き起こす伝説級の魔獣達もビックリである。
そんなケタ外れな生存能力、そして分布範囲を持っている彼らだが、もう一つ特徴がある。
そう、皆もご存じ、弱いのである。
弱い。弱すぎる。
基本的に危険な存在である魔獣の中で、気軽に玩具や食材にされてしまうくらいには弱いのだ。
人の街に現れるスライム(原種)は基本的な大きさが拳サイズ、大きくても犬猫程度。なによりプルリとした身体がいただけない。爪と牙.........どころか凹凸もないスライムには攻撃力が無いのだ。おまけに動きも遅い。
「スライムと戦って負けろ」は「トーフの角で頭を打って死ね」と同義なほどに攻撃力がない。環境適応能力に性能を振り切った反動なのか、一部の種類を除きスライムには外敵に対する対抗手段がほとんどないのである。
「別に環境適応能力があるから死なないじゃん」と思うかもしれないが、その身体に浮かんでいる『核』を抜きとられたり壊されると一瞬で行動不能になる。
なにより致命的なのは本人に戦う意志がないことである。
そう、彼らは戦わない。
人すら超越する分布範囲をもつ王者としての余裕だろうか。なんと彼らは自身の身に危険が迫った時、その脅威を無抵抗で受け止めるのである。
踏み潰されようが、投げられようが、犬に食べられようが、流動体を削られようが、彼らは抵抗しない。その核を砕かれる最後の状況ですら無抵抗を貫くのである。
何故抵抗しないのか、学会では「種として生存すれば問題ないから」「平和の概念をもつ魔獣だから」「対応するだけの性能がないから」「生きる気力がないから」「お前は聖人か何かか?」「いい加減にしろ」「意味が解らん、やる気を出せ」等、様々な意見でおおいに議論を沸かせた。
なお最近の研究では、スライムが抵抗しないのは「危機的状況に気付いていないだけ」という説が有力である。
彼らを見ていると生きるという事の意味を考えさせられる。
余談だが、スライムの体は質の良い魔力で構成されているため、食べることで消費した魔力を補填することが出来る。野生の魔獣がスライムを食べるのはこれが理由である。
田舎ではメジャーな食材であり、冷やしてから果汁と混ぜて食べるのが一般的。
暑い日には、つるりとした食感と爽やかなのど越しのスライムを食べて過ごすのもいいかもしれない。
『テイマー視点からの解説』
魔獣と契約するには魔力量がある程度、同じである必要がある。
が、スライムは所有する魔力が拳大程度しかないため、よほど魔力が少ない人間でなければ契約できない。
そして「魔力が少ない」ということは、「魔獣の性能強化」や「魔法攻撃」等の戦闘面で様々なハンデを抱えるということである。
下位魔獣にありがちな話だが、種族的に高い戦闘能力を持つとは考えにくいため、スライムを使役するテイマーの指揮能力が問われることになる。
まあ所詮スライムである。
バックアップするための魔力量、戦闘を有利に運ぶための指揮能力、あるいは魔法によるサポート等、どの力を持っていたとしても、「
スライムと契約した人間という希少さを活かして、スライム専門の研究者を目指すほうが大成する可能性があるかもしれない。
というか、スライムで強さを求めるくらいなら、他のことに情熱を向けたほうがいい。
以上、従魔士専用アプリ『魔獣解説』一部より抜粋
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