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観葉植物

1・桜散る風

それを見た時、俺は絶対に忘れることのできない日々を思い出した。過去を悔やんでも生産性がないのは知っているが、あの時のを俺は未だに許していない。




「小学生の頃から好きでした。付き合ってください」


それは中学一年の春だった。

朝、靴箱に入れている上履きに一通の手紙が差し込まれていた。彼女とは話した時から今年で五年目となる。初めて接点があったは小三の席替えで隣の席になった時だった。


なぜか彼女は両手にギプスをしていた。

どうも彼女はやんちゃをしていて階段ジャンプで両手を折ったらしい。結局、彼女の両手が治るまで教材の荷物持ちや配膳の代理諸々を全て自分がしていた。

そのお陰で責任感が強くなったとも言える。

関わりも増え、部活も同じバスケ部に入った。僕にとって特にメリットが感じられない日常に彼女は心を打たれたらしい。


休み時間、返事の為に隣の教室へ向かった。

スライド扉のレールを踏んで中の様子を伺った。彼女は初めての生徒会の集会がある事に焦っていたのか机の中を漁っている。

しばらくしてお目当ての書類を見つけだしファイルを掴んで顔を勢いよく上げた。

彼女はすぐに僕の存在に気づき慌てた。少しシャイでありながらも元気な彼女の姿に、僕もまた、心を奪われていたのだ。


指先で輪っかを作りオーケーサインを送る。

彼女は驚いた顔をしそそくさと走っていった。後から聞けば、顔と耳が赤くなったのを見られたくなくて走ったそう。会議もずっと集中出来なかったらしい。


その日を境に、僕達の春の風が吹く学校生活が始まった。

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