第20話
「お兄ちゃん、桜が綺麗だね」
「ああ」
日曜日、僕と香耶ちゃんは公園に来ていた。
この公園は、僕の家から歩いて行ける距離にある。
桜の名所。
普段なら花見客でいっぱいだが、コロナの影響で花見をしている人はいない。
ただ散歩している人は、見かける。
「肩の荷が下りると、違って見えるね」
「だな」
香耶ちゃんも桜が咲いた。
もう少ししたら、大学の近くのアパートに、引っ越す予定だ。
「お兄ちゃん」
「何?」
「ありがとうね」
「いいって」
香耶ちゃんのご両親、つまり伯父と伯母から預かって数か月。
数年ぶりの再会だったのだが、もう何年も一緒に暮らしている気がする。
「お兄ちゃん。今日は御馳走してね」
「ああ、何がいい?フレンチか?イタリアンか?」
冗談交じりに言う。
そんなお金はない。
「ううん。鍋」
「鍋?そんなのでいいのか?」
「うん。鍋がいい」
わかった。ここは香耶ちゃんのリクエストに応えよう。
「じゃあ、駅前のちゃんこ屋さんで」
「ううん。お家で食べたいの。」
「えっ、いいのか?」
「うん。しばらくはお兄ちゃんの手料理は、食べられないしね」
そうか・・・
「じゃあ、買い出しに行こう、香耶ちゃん」
「うん!」
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