第21話 冷蔵庫の設定と、懐かしい?人たち
冷蔵庫やリューの食器を買ってきた俺は、帰ってきて早速冷蔵庫をアイテムボックスから出した。
「ど・こ・に・お・こ・う・か・な〜」
フンフフンと鼻歌まじりでキッチンを徘徊する俺は、リューから見るととんでもない変人ではなかろうか。
「よし、この辺でいいか」
ドスンと冷蔵庫を床に置く。
……ん? なんで俺が冷蔵庫を持ち上げられているかって? 神様からもらったステータスが異常に凄いからに決まってるじゃないですか。こればっかりは有効活用させてもらう。使わないとか勿体無い。
床に冷蔵庫を置くと、電源を……。
電源を……。
……あれ? 電源を……じゃないな、コンセントを……プラグに……ってかコンセントどこ?! プラグもない!
どうすんべこれ……。
……………………。
あ。
ここの世界、電気なかったわ。忘れてた。
「いやー、すっかり忘れちゃってたや。魔力供給設定を家でやろうと思ったんだったよ」
なんか最近忘れっぽい気がする。
ちょっと心配になったところで、魔力供給設定をするために説明書を開く。
「うっ……」
俺の苦手な活字の塊な説明書だ……。嫌だな……。
我慢して説明書を読みすすめる。
ふーん、なるほどねぇ……。
まあ、簡潔に言っておくと魔力の供給源設定を行えばそれで済むらしい。なんだ、楽じゃないか。
方法をよく読んで、冷蔵庫に取り付く。
「えーっと……。こことここを触れて魔力を流す……だったっけ?」
次々と冷蔵庫のどこかしらを触れて、魔力を流していく。こうすると設定されるようだ。仕組みは知らん。
「んで、最後にここか。よっと……」
最後に指定されていた部分に触れ、気持ちを込めて魔力を流した。
ブゥゥゥゥン……。
かすかに起動音が聞こえる。冷蔵庫のドアを開けると、冷たい空気が顔に当たった。
よっしゃ、できた。
それから、自分でも少しづつ魔力が減ったり増えたりしている感覚がある。なぜ魔力が冷蔵庫に吸われているのに増えたりしているのかといえば、もちろん神様から頂いた魔力自動回復というスキルがあるからだ。
しかもその自動回復、異世界人強化仕様のため、ものすごい強力である。
魔力を供給しながらでも、いざというときには余裕で戦えるだろうさ。
続いて冷蔵庫に食材を入れていく。現代日本で使っていた冷蔵庫の中のレイアウトに極力近づける。ただ、この冷蔵庫はすごく大きい。もはや家庭用じゃない。
まあ、うちにはリューがいるからそれでも足りない恐れはあるが。
黙々と作業を続けて食材を全て冷蔵庫の中へ。そして作業が終了。
『終わったのか?』
「ん? ああ、終わったぞ」
『メシ』
「はいはい……」
本当に、ご飯の事しか考えねぇのな。ダメドラゴンめ。
心の中で愚痴りながら、冷蔵庫の中を見て、作る料理を決める。
「レッドビックピッグの肉が結構あるな……。そろそろ消費しないと……。なんか冷蔵庫があると使う食材が絞れるな……」
ブツブツ言いながら頭の中で献立を考える。
「ピーマンもある。……青椒肉絲作るか! ……あ、でもたけのこねぇな……」
せっかく青椒肉絲の気分だったのに、たけのこがないという事件。
「よし、買ってこよう。……リュー? ちょっと買い物してくる」
『さっさとしろよー』
リューの返事を聞きながら瞬間移動。
大量に野菜を買わせていただいたセントラル・ノース・シティにある八百屋さん(第9話参照)の近くへ。
人目を気にして路地裏に移動した。
ここから八百屋を目指す。
たけのこはあるのかな……。
店につくと見覚えのあるおばちゃん。
「いらっしゃ……ん? あんたいっぱい買って行った兄さんだね?」
「はい。お久しぶりです」
「あんなにたくさん買われたら、嫌でも覚えちゃうよ」
そう言っておばちゃんは笑う。
なんか覚えていてくれたことに安心する。
「なんだい? 今日もいっぱい買って行ってくれるのかい?」
「いえ、それはまた今度に……。実はタケノコを探していまして……」
「たけのこ?」
「たけのこです……あ!」
そういえばここは異世界である。たけのこなんぞあるかわからない。そもそもないのかもしれないし、名前が違うのかもしれない。なんにしろ、「たけのこ」では通じないようだ。
「え、えーっと……」
「たけのこはちょっとわからないけど、よかったら見てってくれ」
「はい、そうします」
もしかしたらあるかもしれない。望みを捨てずに探してみよう。
と思ったら早速あった。
……あった。うん、あったよ。あった。
デカすぎだろぉぉぉぉ!!!!
現代日本でも結構大きなたけのこというのは存在していた。だが、そんなもの比じゃない。
俺の身長分はある。ものすごく大きい。
「たけのこ」ならぬ「たけのおとな」。デカすぎる。
ちなみに、普通に長いのではなく、横にも広いのだ。現代日本だと大きくなっても長くなるだけだが、異世界たけのこは普通のたけのこをそのまま大きくした感じだ。
「それを探してたのかい? それはエルフのお兄さんが持ってきてくれたね。珍しいものみたいだよ? あんたならいいよ、持っていきな」
エルフってなんか自然に深い関わりのあるイメージがあるし、なんか納得だ。その辺に生えてたんだろう。そしてここに持ってきたのだろう。絶対重いのに。
……うーん……異世界ってなんでも巨大だよな……。
「あ、ありがとうございます。えと……代金は?」
「おおまけにまけて10000イェンでいいだろ。ほんとは50000イェンだけどね!」
そう言ってまたおばちゃんは笑った。よく笑うなぁ、この人。
お礼を言って、超巨大たけのこをアイテムボックスにしまう。
「ありがとうございました。次来た時にはまたいっぱい買わせてもらいます!」
「待ってるよ。それの名前も聞いておくよ」
「それ」とはもちろん超巨大たけのこだ。
別れを告げて、路地裏に戻る。
……。なんか忘れてる気がする。
何か……。
あ!!
米だ!!!!!
前回この辺りに来てものすごく驚いたことは忘れられない。
青椒肉絲を作るのだし、白飯は必須だ。
危ない危ない。
やっぱ日本人は米だよな!!
そう思って記憶を頼りに米屋を目指す。
「この辺にあったはず……。でもな……」
今思い出したのだが、米を売ってくれたおじさん、『この店やめる』とか言ってたんだよな……。残ってるかもわからない。
もし見つからないのならあのおじさんが言っていた「タナカマチ」にでも行ってみようか。というか、そもそもいつか行くつもりだったしね。
と考えていたら、見つけた。
「あ、あった……!」
思わず声が漏れる。
まだ店は残っていた。店の前にはやっぱり見覚えのあるおじさん。
「お久しぶりです」
話しかけてみる。すると、
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
ものすごい叫ばれた。
「救世主だ!!!!!!!」
そして俺は救世主になったようです。
「あなたのおかげで店を辞めずに済みました!! 本当にありがとうございます!!!!!」
手を握られ、涙を流されながら礼を言われた。
「……は、はい……」
「どうぞ好きなだけ持って帰ってください!!」
それは困るんじゃないだろうか。前回買い占めた俺が言うのもなんだが、流石にタダでもらっていくのは……。
「実はあなたのおかげで売れるようになったんですよ!!」
ど、どういうことだ?!
「ジムさんという方が、『米は最高だぞ!! 俺が一緒に旅していた人が米で料理を作ってくれたんだ!! 本当にうまいぞ!!』と言ってくださって……。それで、興味を持たれたご婦人達が購入してくださったんです」
ジム!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あいつやってくれたな!!
しかもフラグ作ってない!!
よくやった!!
「まあ、ジムさんは作り方を一切教えなかったので、次の日には米をそのまま炒めたり焼いたりして食べたご婦人達がこの店に殺到しましたけどね」
うーん。ジム、そこはしっかりしようぜ……。
「でもその騒ぎのおかげでさらに売れるようになったんです。なのでジムさんにお礼を言おうとしたんです。そしたら、『そのお礼は俺に料理を作ってくれたケータという人物に言ってくれ』と」
いらんことするなよ……。別にいいのに……。
「米を買っていってくれたのはあなただけです。あなたがケータさんですよね?」
「はい、そうです……」
「ですからせめて好きなだけお米をお持ち帰りください!! 在庫はまだまだありますから!!」
ここで断るのもなにか悪い気がする。
「……じゃあ、店頭に出ている分全部もらっていいですか?」
「どうぞどうぞ! なんなら全部持って帰ってください!!」
いや、売れてるなら流石にそれは困るだろ。
それは遠慮して、店頭に出ている分をアイテムボックスに入れる。
「ありがとうございました!! またお越しください!!」
お礼を言われつつ店を出る。
あんなふうに感謝されるのは普通に嬉しかった。また人助けできる場面があるのなら、積極的に助けようと思う。
そして瞬間移動で帰宅する。
***
『遅い!! すごく遅い!!』
リューに怒られた。当然だろう。
「すんませんでした!」
『いいから早く飯を作れぇ!』
「はいはい!!」
早速キッチンでピーマンを刻み、たけのこを刻……、み。
「なあ、リュー」
『なんだ?』
「これ、切ってくれ」
『……わかったよ。そうじゃないと飯食えないんだろ? 早くやるぞ』
話が早くて助かる。
実はたけのこが大きすぎてキッチンに出せなかったのだ。まあ、あの大きさじゃあ刻もうにも刻めない。
広い庭に出て、リューに切ってもらう。
『ヨイショ。 できたぞ』
「え? あ、え? え? あ、うん、ありがとう……」
あまりにも早すぎて、たけのこが程よいサイズに切れたことに理解が追いつかない。
何も見えなかった。速すぎだろ……。
まあ、ドラゴンのトップなんだし、そんなものか。
それからキッチンに戻り、再び料理を再開、あっという間に青椒肉絲が完成だ。
米も同時並行で炊いており、ちょうど出来上がった。
リュー専用の大皿と、自分の皿に盛り付けをして、運ぶ。
リューは無理だが、俺はきちんと席についていただきます。
うん、野菜シャキシャキ、味付けもうまくいったと思う。普通に美味かった。
リューも喜んで食べてくれたよ。
***
いやー、まさかね。
こんなことになるとは。
エルフ、獣人と友達になるとは!!
____________________________________
遅くなって済みませんでした。かれこれ一ヶ月も更新しておらず……。というかその前も長いこと更新してなかった気が……。いや、でも受験勉強が……。
はい。全ては言い訳です。読んでばかりだっただけです。済みませんでした。
よろしければこんな更新ペースの遅くなりがちなこの作品をよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます