第19話 早すぎだろ!(作業員の皆さんお疲れ様です)
王城で家づくりの会議をしてから二日が経った。毎日家を見に来てくださいと言われていたので、今日も家を見にいくところである。
進行を見てもらいながら、微調整していくとかそんな感じだろう。
転移魔法で建設現場へ。転移魔法はとても便利だ。これからも重宝するだろう。ただし、バイクを使わなくなることは絶対にないと断言できる。
着くと、テリーが迎えてくれる。
「だいぶ完成してきましたよ!」
いや、早い!!
普通のスピードじゃねぇ!!
もう家はある程度できている。考えられないくらいのスピードで建築が進んでいると言うことである。
王様の命令は絶対だ。「早くしろ」と言われたらベストを尽くして早くする。だからこそのこの建築スピード。
この人たちちゃんと寝てるのか……?
心配しながらも、作業している彼らを見つめる。
心配してはいるが、家ができるのは楽しみだ。着実に家になっていく現場を見ると、ワクワクしてきた。
***
翌日。
現場に行くと。
「ケータさん! 完成しましたよ!!」
「…………は?」
テリーの言葉に偽りなく、イメージ通りの家が出来上がっていた。ちゃんと塀もできている。
それにしても…………。
「早過ぎませんか?!」
結構大きい家なんだけど。
庭もあるんだけど。
その全てが最高品質で、かつ完璧に建築されている。
しかもこの短期間で。
……天才ですかあなたたちは……。
「中も見ますか」
そりゃあもちろん!
新品の綺麗なドアを開けて、中へ。
「うわぁ……」
思わずため息が出るほどに綺麗な家だ。ここにこれから住むのだと思うと、ワクワクを通り越してドキドキしてくる。
「うわ、キッチンも広い!!」
俺が現代日本で住んでいた古アパートの専有面積に匹敵する。
ちょっと広すぎるかとも思ったが、まあいい。
風呂場もついていて、テンションが上がる。しかもただの浴室どころじゃなくて、もはや大浴場、まではいかなくとも、中浴場はある。
嬉しいなぁ、と思いながら階段を登る。この階段すらもおしゃれな仕様だ。
……別にオシャレにしてくれなんて言ってないけどね。
二階に上がれば広々した部屋がいくつもある。バルコニーもついている。
ここでバーベキューとかしたら最高じゃねぇか!!
さらに階段を登って屋上へ。バルコニーでバーベキューよりこっちの方がいいかも!すごく広い。
テンションが上がりまくってヤバくなったままガレージへ。
「ウヒョー!!!」
もうテンションが最頂点まで上がりきった。
ものすごい広い。いろいろ活用できそうな棚や個室みたいなものまである。
完璧だ!
「こ、こんなの作ってくれたんですか……」
「王様からの命ですので」
この人王様に言われたら本当になんでもしそうだな……。こえぇ。
「こんな感じでよろしかったですか?」
「文句は一切ありません。ありがとうございます!!」
「喜んでいただいて何よりです。では、庭にいきましょうか」
外に出て、庭へ。
「…………うん?」
これは……庭か?
視界には、塀で囲まれた森と言って差し支えないものすごい面積の……庭? これ、庭か?王様は何を勘違いしていたのだろう。これは森だろ。
というか、ここにこんな森あったっけ。リューに会った衝撃が大きすぎて忘れちゃったや。
いや。……これが庭でたまるか!
「何か?」
だからどうしましたみたいな顔で言わないでくださいテリー。
これが庭とか言えるの王様くらいだから。
まあ、でも伐採とかしたらいいか。
「いえ、なんでもないです」
そう返答しながらも、俺の持つ家の面積は実質どれくらいなのだろうかと恐ろしくなってきた。
「何もなければ、私らはここいらで帰らせていただきますが」
「特に何もないです。本当に素敵な家をありがとうございました!」
そうお礼を言う。そして、ちゃんと休んでください。多分この仕事が始まってから全然休んでないよあの人たち。
「何かあれば、王城まで来ていただければ対応しますので。では」
そう言って、作業員一行は去っていった。
いやー、設計図だけじゃわからないもんだな。
あれもこれも予想以上に大きかった……。
さてと!!
家も出来上がったことだし。
まずは快適な生活の準備だ!!
***
まずはガレージにキッチンかーとバイクを置いておく。
キッチンカーは念のため幌をかけておく。
備え付きの棚にヘルメットやその他バイクに使うものを全て収納。
いやー、いい空間だよ。
次はキッチン行くか。
と、キッチンについて、調味料や食器を片付けて、さあ食材をというところで、気がつく。
「冷蔵庫がねぇ!!」
しばらくはアイテムボックスで対応していいと思うが、やっぱりきちんとしたキッチンがある方が料理のモチベーションも上がって、リューにうまい飯を食わせてやれるってもんだ。うーん、食わせること前提……。まあ、いいか。
……って、あれ?
よくよく考えたら現代日本の冷蔵庫も小さいがあるっちゃあるな。……しかしやっぱり大きい冷蔵庫の方がいいだろう。モチベーションは大事だ。
ということで、布団はあるがベッドもないし、いろいろ揃えるべく買い出しだ。
ベッドで寝るの、夢だったんだよなー!
ずっと布団だったから。ううっ。
お金のない一人暮らしは辛かったよ。
***
早速買い出しをするべく、今回は品揃えの良いはずのセントラル・シティ方面に行こうと思う。
家の鍵をきっちり閉め、無くさないようにアイテムボックスに入れてから、まずは行ったことのあるセントラル・ノース・シティへ瞬間移動する。
セントラル・ノース・シティのアドベンチャーギルドセンターを思い浮かべ……じゃないな、近くの路地裏の方がいいか。えーっと、あんな感じだったはず……。想像して、さあ行こう!
〈瞬間移動中〉
さ、着いた。
うーん。せっかくだし、久しぶりに冒険者ギルドマスターにでも会ってみるか。
……会ってくれるかは知らんけど。
ついでに買取もしてもらおうっと。
獲物が溜まりに溜まってるので。
ギルドセンターの扉を開けて、買取専門の窓口に。
初めに来た時と変わらず、職員のエルダさん(第7話参照)が座っていた。
「……?」
忘れられているらしい。必死に思い出そうとしているエルダさん。ちょっと悲しくなってくる。
「ああ、ケータ様。今日はどうしましたか?」
思い出してもらえたようで何よりだ。
「今日は買取を……」
「ギルドマスターを呼んできます」
いや、なんでやねん。
思わず関西弁でツッコミが漏れる。まあ、ギルドマスターにすぐ会えるんだし、いっか。
「ケータ様、久しぶりですな! 噂は聞いておりますぞ!」
「久しぶりです、エディさん」
こちらは俺のことを忘れていなかったっぽい。よかった。まあ、あれだけのこと(第7、8話参照)があれば、覚えられるのもわかる。
というか噂はここまで広がっているんだな。怖い。
「次はどんな獲物を売ってくれるのか楽しみにしておりました」
「あー、えーっとですね……」
普通にレッドビッグピッグやら、ブロンズビーフキャトゥルなどの当たり障りのない獲物を出していく。これらは旅の途中なんかにリューが狩ってくるので、すぐに溜まっていく。
「ま、まだありますか……。しかし、ケータ様のもってきてくださる獲物はどれもこれも綺麗ですねぇ」
俺が狩ったんじゃないけどな。
「い、以上ですか? しかし、こんなにあるとは……」
獲物が山積みだ。
まだまだあるけれど。今日はいいや。
それより……。
「もう一つすげーものあるんですけど」
「なんでしょう?」
言っていいのかな……?
……言っちゃえ!
「馬鹿でかいサメ……です」
メガロドンもどきである。食べられるぞ、とリューに聞いたので、シードレアの方々にはバレないようにこっそり回収したのだ。
名前がメガロドンもどきなわけがないから、馬鹿でかいサメ、と言ったが、本当にでかいので、出したらこのギルドセンターは潰れること必至である。
なので言うだけに留めた。
「ま、まさか、シードレアで討伐された?!」
「あ……はい」
「噂通りでしたか!! ……でもここでは無理ですね……」
無理ですね。
「セントラル・シティの方に行けば、買い取ってくれるかもしれませんな」
「あ、じゃあそうします」
「では、お出しいただいた獲物は買取させていただきます。……あ。前回のように食べられるところだけ……とかは……」
「今回は全部買取でいいです」
「そうですか! では、査定の時間をいただきたいので明日に現金をお渡ししてよろしいですか?」
「はい」
そうして買取手続きを済ませ、ほんのちょっとだけギルドマスターと世間話をし、ギルドセンターを出る。
面白かった。
さて、セントラル・シティ、行きますか!
歩いてセントラル・シティに。
セントラル・ノース・シティとの境界線となっている大きな堀にかけられた橋を渡る。
「な、長い……」
予想以上に橋が長く、疲れた。が、ついにこの国一番の都市、セントラル・シティに着いた。
「着いたー!」
思わず叫ぶ。周りの人に変なものを見る目つきで見られたが、そんなのは知ったことじゃない。
さーて、ゆっくり観光するのはまた今度にして。家具を探そう。
少し歩いていくと、ちょうどよく家具屋を見つけた。雰囲気もいいお店だ。
ここで買おう!
早速お店の中へ。
「うわぉ」
思わず声が漏れる。
ベッドもソファもある。テーブルも椅子も。勉強机みたいなものもある。
種類も豊富だ。
どれにしようかな……。
俺はあれこれ物色し始めた。
ちなみに、ここまでリューはずっとカバンの中で寝ていました。ダメ人間ならぬダメドラゴンになりそう……と言うよりなっています。
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読んでくださりありがとうございます。ようやく試験も終わり、更新再開です。
引き続きよろしくお願いします。
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