ぶらついてて出会った少女の手伝い&冒険者をする

第3話 独りぼっちの少女２

　キシはいつの間にか少女のもとへ近づいていた。

いきなり現れたキシを見た少女は少し驚いて警戒していたが、すぐに視線をもとに戻し下を向いてしまった。

「隣、座っても良いか？」

　キシは少女にいつもより優しめの声で話しかけてみる。

「……いいよ。」

　すぐにだめと言うと思ったが、意外にあっさりと承諾してくれた。

「ありがとう。」

　キシは少女の隣に座る。

「……」

「……」

　お互いしばらく沈黙する。

キシは少女の姿を観察してみることにした。

　紫髪でショートヘア、瞳も紫色で大きな目、小さな顔。

しかし、服装に少し引っかかるものがあった。

少し短めのスカートを履いているまではいいのだが、

(上の服がどう見ても和服っぽいんだよな…)

　しばらく考えていると、キシは思い出した。

(まさか、陰陽師が着ていた服か！？

何でこの世界でもあるんだ！？)

　そう、少女が着ていた服は陰陽師の映画やキャラクターでよく見る陰陽師の和服だったのだ。

「って言うことはこの子は陰陽師なのか？」

「…急になに？」

「あ、いや…。なんでもない。独り言だ。」

「そう…。」

　また、沈黙が走る。すると、

「……ねえ。」

「ん？」

「あなたは何しに来たの？」

「えっ…えっと…」

「用がないならさっさと帰ったら？」

「……じゃあ君に聞きたいことがあるだけど。」　

「なに。」

「君さあ、ここで死のうって思っているよね？」

「！？」　

　キシは感付いていた。

キシは前世、学校でも虐められ、親からも虐待を受けていた。

　苦しい状況から今すぐにでも抜け出したいとすぐに思いついたものは、

『死ぬこと』だった。

　その時のキシの表情はまさにこの少女と全く同じだったのだ。

「な……なんでそんなこと…」

　少女は考えていたことをあっさりと見抜けられ、声が震えていた。

「そんなの簡単さ。俺もそういう風に考えていた時期があったからな。

でも、君は俺よりも若いんだからまだこれからがあるってのに、そんなこと考えても損するだけだぞ？」

「そんなのあなたに分かるわけないじゃない！」

「じゃあなんで今涙を流しているんだ！」

「……っ！」

「あれなんだろ。周りに自分のこと認めてくれないし、頼れる人がいないんだろ？」

　少女は涙をポロポロ流しながらキシを見る。

「じゃあ……」

キシは立ち上がって少女を見る。

「俺が君を認めて、頼れる人になってやるよ。」

「え……！？」

「俺はいつか、そういう境遇にあった奴を助けたいって思っていた。

だから、君を助けたいって思ってさ。」　

「そんなの信じられるわけ……」　

「それだったら一生自分を助けてくれる人なんていないぞ？」　

「うっ…ぐすっ……」

　少女は先程よりさらに大粒の涙を流す。

キシはしばらく間を置くと、

「じゃあ俺から1つ質問だ。正直に答えろよ。」

　キシは大きく深呼吸をする。

「助けてほしいか？

助けてほしいなら君の名前を言って。

逆だったら何も言うな。」

「……私は――」　

　少女が言おうとした瞬間、何かに狙われている感じがしたキシは急に顔を上げ、前方を見る。

少女もキシを見て後ろを振り向くと、

「え……キラー、ウルフ……」

と、顔を蒼くする。

　それもそのはず。二人が見たものはこの世界では恐れられているモンスター、キラーウルフがいたからだ。

　キラーウルフは上位モンスターに属し、ベテランの冒険者でも討伐が非常に難しい。

なぜなら、攻撃をくらえば即死だからだ。

　しかし、キシは平然と少女の前に立ち塞がり、キラーウルフの方へ行く。

「待って！

まさか、本当にキラーウルフと戦う気！？

あなたは死んでしまう！」

　少女はキシの腕を掴んでそう言った。

しかし、キシはニコニコしながら、

「大丈夫だ。俺はキラーエルフと何回も戦っているし、負けたことは一度もない。

それと、俺がこいつと戦っているところを見たら、たぶん君は驚くと思うし、俺のことも信用できると思うから。」

　キシはそう言うと目を瞑る。

すると、キシの身体から膨大な魔力が溢れる。

「え…。頭に角？

まさか、あなたは鬼、なの…？」