第七章 その⑤「ニチアサと言えば」
翌日。今日は日曜日。成行は
雷鳴が宅配寿司を注文したので、ちょっとした寿司パーティーになった。寿司は好物なので、成行にとっては嬉しい
帰宅後は
スマホで時刻を確認すると、それを片手に自室を離れる。
「うーん。よく寝たなあ・・・」
「えっ?」
良い匂いがした。トーストが程よく焼ける匂いだ。コーヒーの匂いもする。
「どういうことだ・・・」
思わず急ぎ足になる成行。階段を下りて、ダイニングルームへ向かった。
「あっ、おはようございます」
ダイニングルームへ着くと、そこには一人の少女の姿。黒髪ロングヘアをお嬢様縛りにした後ろ姿。
サッと振り返り、愛らしい笑顔で挨拶してきたのは何と
「何で立夏さんがここに?」
立夏は鼻歌を歌いながら、ご機嫌な様子で朝食の支度をしていた。白いエプロンを身に着けて、その下は体操着とブルマ姿である。
成行の視線に目ざとく気づく立夏。
「あっ!もしかして、裸エプロンなんて想像しました?ダメですよ。女の子に対して、そんな想像をしたら。いくら私だってそんな非常識な
成行をたしなめるように言う立夏。
「じゃあ、体操服で朝食を用意する
透かさず問い返す成行。
「えっ?これは岩濱君の趣味だという報告がありましたが・・・?」
自身の姿を見ながら答える立夏。
「それは違う!嘘だ!
思わず語気が強くなる成行。
「まあまあ、いいじゃありませんか。運動時だけでなく、料理の際にも動きやすいですよ?」
のんびりとマイペースに答える立夏。
「本当かよ・・・」
「あっ、嘘だと思っている。なら、着てみます?」
「遠慮します。結構です!」
ここにも自分のことを誤解している人物がいる。この誤解も何とかしなくてはならないだろう。
「それはさておき、朝食の用意ができましたので、冷めないうちにどうぞ」
立夏はテーブルの方へ手招きする。
「あっ、これはどうも」と、思わずお辞儀をしながらテーブルへ向かう成行。
「って、立夏さん!何で、キミが僕の家で朝食を作っているの?」
「だって、岩濱君に美味しい朝食を食べてほしくって・・・」
寂しそうに答える立夏。その表情を見て、思わずたじろいでしまう成行。
「そうだったんだね、立夏さん・・・。って、違うでしょう!何で勝手に人の家にいるの?プライバシーって言葉を知らないの?不法侵入って言葉を知らなの?魔法使いは、日本国の法律を
「もう!そんなにムキにならないでください。文句を言う前に、私の朝ご飯を食べてください。冷めちゃいますよ?」
「ああ、もう」と言いつつ、ちゃっかり席に着く成行。
朝食のメニューは、トースト、ハムエッグ、ミニ野菜サラダ、果物入りのヨーグルト。それにホットコーヒーとミルクも用意されている。
「では、せっかくだし、いただきます・・・」
納得がいかないことだらけだが、食事には罪はない。まずは食してみよう。
「はい、どうぞ」
満面の笑みで答える立夏。
トーストにマーガリンを塗りながら成行は尋ねる。
「立夏さん、ただ単に僕のために朝食を作りに来たわけじゃないよね?」
すると、立夏は一瞬驚いた表情をして言った。
「あら、気づきました?」
「気づくよ。さっきの理由が本当なら、立夏さんは毎日でも僕の家に来そうなきがするから」
「私はそれでも構いませんよ?」
嫌な顔ひとつせず答える立夏。
「それは遠慮するよ。見事さんに悲しい思いをさせる気はないし」
キッパリ答える成行。
「あらあら、恐妻家なんですね?」
からかうように言う立夏。溜息を吐いて成行はマーガリンを塗る手を止めた。
「で、本当の目的は?」
「そうですね。じゃあ、お伝えします」
立夏は自分の分として用意していたコーヒーカップを手にする。
「岩濱君へ監視をつける件ですが、あれはなかったことにしてください」
そう言ってコーヒーを口にする立夏。
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