第13話:言葉遊び
「どうするつもりなんだい、サヴィル公爵」
ノーマンが微妙な言葉遣いで話しかけてきます。
私とノーマンの関係はとても難しく微妙なのです。
基本は本家と分家の幼馴染です。
次に私から見れば元婚約者の弟になります。
つい先日までは家を継いでくれる夫候補、婚約者でした。
今は、婚約者のままではありますが、公爵家は私が継ぎました。
第三王子と公爵家当主というの確定した関係になります。
どちらの身分が上になるのか、非常に微妙な力関係です。
「そうですね、今は変に手を加えない方がいいと思います。
ここは傭兵団や冒険者パーティーごとに部隊編成をして徐々に合同訓練を行い、大部隊として戦えるようにしたいと思っています、ノーマン第三王子殿下」
「ああ、今まで通り殿下とだけ呼んでくれないか、ノーマン第三王子殿下なんて堅苦しい言い方をされたら哀しくなってしまうよ」
そうですよね、周りも私達の関係がおかしくなったと思いますよね。
まあ、実際に家同士の関係はおかしくなってしまってるんですけどね。
二人の間くらいは今まで通りにいきたいですね。
「そうですね、殿下。
だったら殿下も今まで通りヒルダ嬢と呼んでくださいますよね」
「いや、それはさすがに人目があるからね。
公爵家の当主を嬢呼ばわりはダメだよ」
「ではサヴィル公爵と爵位で呼んだりするおつもりですか。
それはいくら何でも他人行儀過ぎて寂しいですわ」
ちょっと甘え過ぎているのかもしれませんが、家臣領民の命と生活を背負う公爵家の当主という役目は、心の負担が大きすぎます。
わりと平気で好き勝手やってきましたが、今はもうそうはいきません。
心安いノーマン相手に言葉遊びして息抜きさせてもらわないと潰れてしまいます。
まあ、私の性格なら、しばらくすれば平気で慣れてしまうとは思いますけど。
「う~ん、困った、だったらどう呼ばせてもらえばいいのかな。
サヴィル公爵家の家臣領民の目にどう映るかを考えなければいけないし。
もしかしたら王家の目付がどこかで見ているかもしれないしね」
結局はそういう事ですよね。
国王陛下なら私はもちろんノーマンにも監視をつけていますよね。
それくらいする人じゃないと、安心して国を任せられないですよね。
国王は気がつかない間に王子が叛乱軍を組織していて、自分の子供に弑逆されてしまうなんてことが起きたら、国が荒れて国民が苦しむことになります。
まして今はバニングス王国が虎視眈々と侵攻する機会をうかがっています。
しかもそれに加えて王子同士が王継承権を争っているのですから。
「だったらヒルダ公とでも呼んでいただけませんか。
せめて家名ではなく名を呼んでいただきたいですわ」
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