第3話:思惑
「ええ、全然かまわないですわ、ノーマン第三王子殿下。
別にサヴィル公爵家の支援がなくても生活には困りませんわ。
私には神々が与えてくださった魔力の才がありますから。
日々の糧くらいは森や河で狩りをして得られますもの」
「これは公爵令嬢とは思えない逞しさですね。
まあ、でも、それではあまりにも不公平でしょう。
王家がそんな事をしてしまったら、多くの貴族から反感を持たれてしまいます。
それでは国の運営に差し障りが起きてしまいます。
ここは穏便に話しを進める訳にはいけませんかね」
「穏便にですか、ノーマン第三王子殿下は何を考えておられるのです」
「特に何も考えてはいませんよ、ヒルダ嬢。
国が荒れて治安が悪化して民が苦しまないようにしたいと思っているだけです。
ああ、そうそう、もうノーマン第三王子殿下と呼ぶのは止めてください。
あまりにも仰々し過ぎますから」
先程から優しい言葉と笑顔で話していますが、強かですね。
民の事を口にして私を逃がさないようにしています。
殿下の目的は何なのでしょう。
メイナード第一王子とモンタギュー第二王子を押しのけて、王になる事が目的なのなら分かりやすいのですが、他に何か企んでいる可能性もありますね。
「分かりました、殿下。
これからは殿下とだけ呼ばせていただきます。
ですが殿下の申される治安の悪化という意味が分かりません。
むしろ表立ってグロリア夫人やヘーゼルを処分する方が、メクスバラ王国には危険なのではありませんか。
何と言ってもグロリア夫人はバニングス王国の王妹ではありませんか。
あまり恥をかかせるわけにもいかないのではありませんか」
「まあ確かに、恥をかかせ過ぎて戦争になるのは頂けません。
ですがメクスバラ王家がこれほどの恥をかかされて、泣き寝入りする必要もない。
いえ、黙っていては周辺諸国に舐められてしまいます。
ここは断固とした処置が必要になります。
ですがその為には、メクスバラ王家の本家分家が争うことなく力を合わせなければいけないのですが、メイナード兄上も困った事をしでかしてくれました」
なるほど、そう言う事でしたか。
今はノーマン第三王子殿下だけしか動いていませんが、随分前からナサニエ国王陛下直々の、グロリア夫人にかかされた恥を雪ぐつもりだったのですね。
まあ、メクスバラ王国とバニングス王国の友好のために、サヴィル公爵家は評判が悪かったグロリア夫人を後妻に迎えたのです。
あの当時は王女だったとはいえ、十数番目に流民の娘から生まれ、身持ちも悪いと評判だったのにです。
メクスバラ王家は友好のために、嫁ぎ先のないグロリア王女を引き取ってやったくらいの気持ちで、父の後妻に迎えたと聞いています。
さすがにナサニエ国王陛下も腹に据えかねているのでしょうね。
ですが、だからと言って、私がそれに付き合わなければいけない理由にはなりませんから、とっとと逃げさせてもらいます。
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