第2話:ノーマン第三王子

「これはこれはノーマン第三王子殿下、何を申されているのですか。

 これは復讐ではなく当然の行動ですわ。

 復讐とは恨み辛みのうえでの行動です。

 ですが私がやったのは婚約破棄を言い渡される前の行動です。

 私が自由に生きるための決断と行動です」


「確かにその通りですね、ヒルダ嬢。

 私が間違っていました、ヒルダ嬢の将来のための行動ですね。

 で、この後はどうするつもりなのですか」


 ノーマン第三王子は相変わらず家臣相手でも丁寧な言葉遣いですね。

 騎士の令嬢に対する礼かもしれませんが、とても似合っています。

 持って生まれた才能と生まれてからの努力の積み重ねが、メイナード第一王子と大きな差を生んでしまったようですね。


「私は自分のために生きたいのです。

 サヴィル公爵家の為でもメクスバラ王家の為でもなく自分のためにです。

 だから今回の浮気騒動はいい機会だったのですよ、ノーマン第三王子殿下。

 これで好きな男性と結婚する事ができます」


「それは画期的お考えですね、ヒルダ嬢。

 ですがそれでは、サヴィル公爵家はレジナルド殿の血を引かない。赤の他人が家を継ぐことになってしまうのではありませんか。

 それでは公爵家を名乗る資格がなくなってしまいますよ。

 ヒルダ嬢はそれでもいいのですか」


「ノーマン第三王子殿下はどこまで知っているのですか。

 ノーマン第三王子殿下だけが知っているのですか。

 ナサニエル国王陛下も知っておられるのですか」


「さて、別に告げ口をする気はありませんので、私から報告はしていません。

 ですが父王陛下が独自に知られている可能性はありますね」


 これはちょっと困ってしまいますね。

 グロリア夫人の不義が表沙汰になってしまって、弟のオーウェンが父レジナルドの血を引いていない事がバレてしまうと、私が跡を継ぐしかなくなってしまいます。

 サヴィル公爵家の家臣領民の生活と命を護るなんて、そんな重い役目は嫌です。

 そもそも本当は結婚する気もないのです。

 ああ、そうだ、今なら表沙汰になっても大丈夫でしょう。

 このままの状況ならナサニエル国王陛下にとっても望むところでしょう。


「ではノーマン第三王子殿下からナサニエル国王陛下に真実を伝えてください。

 その上で大きな汚点がついたメイナード第一王子の王位継承権を下げて、望み通りヘーゼルと結婚させてサヴィル公爵家を継がせるのです。

 そうすればメクスバラ王家の血が父系に残りますから、公爵家を名乗り続ける事ができますし、ナサニエル国王陛下の実子がサヴィル公爵家の当主になれます」


「ヒルダ嬢は本当にそれでいいのですか。

 そんな事になったら、ヒルダ嬢はサヴィル公爵家の支援を全く受けれなくなってしまいますよ、本当にそれでいいのですか」

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