第6話 勝負

「ここでやりましょう!」


 メルがツインテールの少女を連れて来た場所は甘い物が並んだビュッフェの店だった。ルーウェンはここでは少女は納得しないと確信していたが着いて来たケイとイリアは満更ではない様子で「私も負けません」と参戦を表明していた。


 ツインテールの少女はそういう事じゃないと始めは譲らなかった。目の前に並ぶ宝石のような数々に心は奪われて陥落するのは目前と手に取るようにわかる。決め手となったのはこちらで支払いをすると言う一言だった。


 見るからに裕福そうな少女だったのでまさかとは思ったが普段お金は使用人に持たせているのだろう。ルーウェンもメルに任せている。そもそも違う目的で来たのだから仕方ないことだが違う意味で少女は困っていたようだ。


 テーブルに置かれた沢山の皿は次々と無くなっていった。3皿ほど食べてルーウェンはギブアップした。ハルトもすでに手が止まっている。


 お腹いっぱいになったルーウェンはイリアを連れてテーブルの品を補充しに席を立った。


「イリアも結構食べるんだな」


「甘いものは別腹です。それでもあのお3方ほどは食べられません」


「あの量はおかしいな。メルがあれだけ食べるのを初めて見た。新しい発見だ」


「女の子は殿方には知らないことがたくさんあるんです」


 ルーウェンは「生意気な子め」と言ってイリアをこしょぐった。「止めて下さい」とイリアは笑いながら涙目で懇願する。可愛い妹が出来た気分だ。


 テーブルに皿を置き席に着くと「ずいぶん楽しそうでしたね」とメルに突っ込まれる。


「実際に楽しかったんだ」


 正直にルーウェンは答えた。イリアはふんっと顔を逸らしたが本気では怒っていないとわかっていた。


 時間がある程度過ぎビュッフェ勝負を制したのは勝負に関係ないケイだった。


「名前を聞いて無かったわね、私はメル」


「サラよ。次は負けない」


 勝ったのはケイだしそもそもこれで勝負に負けた判定を出していいのか?いいならいいか。


 その夜、夕食の席でサラは父に財布をおねだりした。数日して買ってもらった財布を大事そうに鞄にしまい次の勝負に挑むことになるがルーウェンたちはまだ知らない。サラ本当にそれでいいのか?

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