恐らく俺は恋愛に不向き
きさ 佐伯
第1話 あれ?俺って同性としかつるんでなくね?
「何故なんだ…おかしい」
夜中の静かな空の下。俺、中村亜友夢は呟いた。地方の公立高校に通う16歳。高2だ。友達もそれなりにいるし、クラスでの立ち位置もいい方。これまで学校生活において悩みなど微塵もなかった。しかし、今になって大きすぎる問題に気づいた。気づいてしまった。
「なんで俺は異性とつるむ機会がないんだ…!」
そう。彼には親しい異性がいなかった。微塵も。今までそんなことは気づかなかったし気にもしなかった。ではなぜこうなったのか。それは今日の放課後に遡る
「ふぅーやっと終わった〜。」
まだ新学期が始まったばかりなので午前で授業は終わる。午後は暇なので友達の1人の小野田洋孝でも誘って寄り道しようと声をかける。
「ひろたか〜。午後暇だから一緒に寄り道しようぜ〜」
「あーすまん亜友夢。俺この後カラオケに誘われちまってさ」
「え?誰にだよ。」
「あのグループよ」
洋孝が指さしたのは女子と男子の混合グループ。よくあのメンバーで休み時間とか話しているのを見る。たまに洋孝も混ざってたりする。
「そうかぁ。先客なら仕方ないや。楽しんでこいよ。」
「ああ。ごめんな、付き合えなくて。」
そう言って洋孝はグループの方に向かっていった。
「洋孝はダメか。仕方ない、他を当たるか」
そう言って俺は、別の人間を誘うことにした。
それは木村薫。彼は多分何も無ければ誘いに乗ってくれる。何も無ければ。
「薫、暇だし寄り道でもしてかないか?」
「ごめん。俺この後彼女が待ってるんだよ」
「あ。まじか」
すっかり忘れてた。こいつ彼女いるんだった。しかもめっちゃラブラブ。それを忘れてしまうなんて俺はどうしてしまったのだろう。
「だからすまん。またの機会に誘ってくれ。」
「ああ。全然いいよ。可愛がってやれよ。」
「ああ。じゃあまた明日な」
そう言って薫は教室を出ていった。
「洋孝に薫もダメか、まあ次で最後にするか。」
そう言って俺は3人目に声をかける。名前は小川蒼介。彼なら付き合ってくれるだろう。そう確信しつつ声をかけた。
「蒼介。寄り道しようぜ。」
「あーごめん亜友夢。午後ねーちゃんがドライブしてくれるから今日は無理だわ。」
「まじか。いいなドライブ。楽しんでこいよ。」
「ああ。じゃあな。」
蒼介も帰って行った。
「まあいいや。1人で寄り道しよう。」
そう呟いて俺も教室を出た。
寄り道と言っても1人だとすることがなく、結局すぐに帰宅する羽目になった。
「ただいま〜」
誰がいる訳でもない家にそう呟いた。親は2人ともまだ仕事。まあ本でも読んでゆっくりしよう。
本を読みながら俺はあることを考えていた。
-なぜ俺は誰にも誘われず1人家帰ってきたのか-
かれこれ3時間ぐらい考えて、1つの結論にたどり着いた。
「よく考えてみれば、俺って女子とつるんだことほぼ一切なくね?」
そう呟いた途端、全てを理解してしまった。今まで全く気にしなかったこと。異性との関係。今まで考えたこともなかったのに、今日の放課後の1件で気にせざるを得なくなった。
思えば誘った奴全員断った理由に「異性」が絡んでいた。それを振り返るとなぜだか無性に悔しくなってきたし、虚しくなってきた。
「俺には、異性が足りなかったのか…」
これまでの学校生活を振り返ってみると、異性とのイベントは微塵もなかった。しかしそれ以上にそれを気にもしなかった過去の自分に悲しくなった。
「焦ってもダメだ。まずはなぜそうなったのか考えてみよう。」
そして俺は2時間ぐらい考えた。そして出た答えは
「わからん!」
そう。どうしてもこれだけはなぜだか分からなかった。そうして途方に暮れた。
そんなことが放課後にあった。
「過去を悔やんでも仕方ない。未来を変える!これから少しづつ異性と絡んでいこう!頑張るぞ俺!」
そう1人静かに決意した。
「絶対に彼女つくってやるからなあああああああああああああああああああああ」
「亜友夢うるさいよ!!!!」
「さーせん」
母さんに注意されてしまった。しかし、この俺の思いは誰にも止められない!明日から頑張るぞ!
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