第67話 祝福
救われた。
その実感からシイナを強く抱えていた。
抱擁してる女性が敵か味方か、明白に物語っているのはこの人達がいなければと、力が弱まっていった。
「交代ですシイナ様ぁ」
「辞めて下さい」
離れまいとするシイナ。
涙が零れていった。
気が付くと「御無事で我が君。わたくしは貴方の意志に従う一員であり、何事も使う。命令あらばこの身を
「故に」と涙を拭かれ「シイナ様を守れるかわたくしが判断致します。是非、本領を魅せて頂きとう御座います」と黒い泉が拡大する。
「申し遅れました。わたくしレナの契約者で、根底はわたくしにある」
「君達に感謝してる、でもこの期に及んで自分に期待は出来ない」
あのまま行けばシイナと死んでいた。
そうした自己嫌悪に言霊が流れ込む。
「
俺は熾天使二人に挟まれていた。
「悪に屈する事なかれ、その上最上級の咎人にいい心掛けだった」
「償う意向を勧める推薦。私が申告してもいい」
まるで
「莉緒。三人行った」
「でも関係性は少年の方が上らしい。はて、どういう事かしら? 裏切り者」
レナの後ろに現れる熾天使がそう言って剣を振り落とす。
俺は三叉槍を投げる構えを抱擁され「時間の歪みに堕ちていましたよ」と莉緒。
「もう大丈夫」
アルトが熾天使の剣を受けて、その姿が印象に残っていく。
とても小さい容姿が脳裏に過ぎり「ルカ」と口にした。
「アルトでいいって」
照れるアルト。
アース ルカ トゥールイス。
俺はルカと呼んでいた描写が、高音に目覚め。
二人の熾天使が莉緒、シイナを捉える斬撃に紅いベールが顕現していた。
「効かないか」
「やはり尊厳には尊厳で」
紅いベールとの反発が風を生み、一方黒い泉の中で軽快に身をこなす熾天使とアルト。
「レリアスの王族に置かれる身分は伊達じゃないらしいわ」
熾天使の攻撃が止む。
休息が訪れる。
ミカエル、ラファエル、ガブリエル。
その名を聞くまでは。
「我々は今日に至る全てを想定している。シミュレーションの際、動機づけのホログラムを導き出し、確立している」
御大達が黒い泉に降り立っていた。
また熾天使達の慎む中「赤子の戯れ沙汰には難儀にして、皆目検討がつかない」とガブリエル。
ミカエルから「何故
一帯を清めるかの冷気に、黒い泉は消失し天を覆う援軍が集結していくが。
「要らぬ」
ラファエルから
束の間に強靭な結晶が天使達の五体を捉え。
「与えられた使命を全うしなさい」
砕けて、解放される。
「今破っているから君達にも同じ罰が与えられない様にって、言われたら嬉しかっただろうに」
「情動を口頭せんと動かぬ奴らがここに君臨出来ると思うてか」
「葛藤こそ生命の祝福だよ」
「話にならん」
ラファエルの瞳に力が入る。
その一声より牽制しているラファエルは顕現する槍でアルトの喉を狙い打つ。
以外には分からなかった。
起きている結末はミカエル、ラファエル、ガブリエルに立ち会っている三人の存在と。
ラファエルの槍が真っ二つになっている。
内の一人が槍の刃を握り締め「俺らが君らをメイミアから引き剥がす担当だったんだが、流石元学級委員だぁはっはっは!」と粉々にし、怪力的な喝采が視線を集め。
「そうか…あろう事かレリアスの主位がここまで揃うとは、何処かで叶わぬ反抗だと高を括っていた。我々に子守りでもしながら本気で叛逆していると、思慮出来んのだ…」とラファエルの目が充血。白い冷気が一面に吹き抜ける。
悪寒。
「先生。俺はこの地に来て頂いて、みんなの意思を無下に、なのに俺は今…凄く嬉しいんです」
「…オル…トロス」
「…はい」
「俺は…」
「…。」
「…分からないんだ…分からないけど」
「その…」
「この地には自分の意思で来た。だから死にに来てないよ」
「ええ」
「オルトロス。僕は、シオン先生が即座に駆け付けるって言葉が大好きだ」
「ああ」
「身を挺して有言実行してくれてる以上、御大達、神の叛逆が上回る誇りをここに第十四騎士団王位側近が証明する」
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