第42話 魔力の知識
凹凸の
入ると部屋の壁は本棚で埋まっている。
奥には机があり白服の男が黙々と記帳していた。
俺は白服の前に立って。
「
少しして鼻息が響く。
途端に床が振動し奥の壁に通路が出現した。
白服は席を立って通路に向かうと天井の隅から電球が付き出す。
「ついてきたまえ」
俺は白服の後に付いて方向感覚が鈍る迷宮かの廊下を歩いていた。
直に紋様が彫刻されるドアに差し掛かり、白服は開ける。
「諸君来客だ。宇宙文明高等学校の情報を仕入れろ」
コードまみれの一室でパソコンを使う人達が、小型大型と数枚の液晶に包まれている。
「師匠! 私で良ければ」
目の下にクマがある若い女性が挙手した。
「高圧なセキュリティだ、しくじれば
言って他を探す白服。
しかし「やってみればいいじゃない?」と最前の席に居る女性の声に「はい!」と、若い女性はキーボードを叩き出す。
「完璧に情報を抜き出してみせます!」
白服は金髪の女性に困りきった表情を差し向けた。
「フレア…あの子は疲れている。それにサイバー攻撃をどう処理するつもりだ」
耳を澄ますとそう囁いていた白服。
また耳を澄ます理由は燃える様な出力音が聞こえるため、フレアという女性はやる気を尊重したいと続けた。
「バックアップは付くわ」
「それで知能を共有する相手に処理し切れる筈ないだろう」
「あら。ネット回線で魔力が底を尽きる、そう言われてるみたいだわ」
「莫大な魔力を必要とする行為だ、回線に干渉し切れず生命維持に関わる」
言ってフレアの机を叩き付ける。
一室に緊迫感が漂った。
方やうっとりして白服にツンツンと触り出す。
「私が死んじゃうって考えてるの? このこのー」
「違う。貴様が死ねば組織のシステムが機能しなくなると言っている」
「なによ? ここに
更に解説していた白服の論理的な説明がフレアの言葉で遮断された。
加えて興醒めとばかりに呆れるフレアや細々と作業を進める人達、一転し白服はホワイトボードへ衝撃を与えた。
「おい…誰かコイツを海に沈めて来い…」
察し済みの様な人達がやはりと縮こまり、作業中の誰かが声を潜める。
「…それが出来れば苦労してないです」
愚痴の籠った言葉が瞬く間の機械音に消失し、だが──
「今苦労が如何ちゃら言った奴、正直に名乗り上げろ」
フレアが掌でホワイトボードを粉砕し、縮こまっていた人達が尚顔を伏せ出した。
気まずいわ…。
依頼した側とはいえ、思わず緩和に繋がる提案をしていた。
「あの、魔力が必要なら幾らでも」
「優しいのね、誰かさんとは大違いで?」
「お前は一人でやる自覚を覚えろ」
「あら人類の存続は助け合いじゃなかったかしら」
お互いに額を重ねていると、警告かのサイレンと悲鳴が伝う。
若い女性からだった。
どうやら仮想環境の崩壊、そして自身のOSが破壊されたという事で。
「どうしましょう…」
「早過ぎるわ! クソ…代われ、フレア‼︎‼︎」
べそをかく若い女性に急行し、白服が交代する。
一方で血相を変えるフレアが自席の液晶に触れた。
それはプログラムを起動した様に、複数のウィンドウが宙に浮遊しフレアを囲う。
同時に青い球体が一室に出力した。
「逆算で君の魔力を私に供給するスキルを準備するから、身体に触れておいて」
従いながら所々赤く染まっている青い球体を一望する。
詳細は不明、けれど攻撃的な紋様をキーボードで打ち込む姿は、ネット回線と魔力が繋がり、高速で消耗しながらウイルスと警告するプログラムを破壊している様で。
「サイバー攻撃はボスと私が担当する、データの保護に徹底しなさい」
「それが! セキュリティー側のパフォーマンスが最小値にまで落とされています、どうすれば…」
一同が騒然とし最速で打ち込んでいる白服が口を張る。
「元来我々の情報を盗みたがっている連中に自ら入り込んだんだ、想定の範囲内で乱れるな」
「大丈夫、脅威なウイルスから私とボスが消去し時期に復帰する。それまでに準備しろって事だから慌てなくていい、それと…いいかな?」
液晶に解析数値とある、京という数のウイルスを抑制し、魔力を消耗している姿に。
「お願いします」
構えて待つ。
頃には小声より遥か小さく、
〝
言霊に心拍が共鳴する俺は、絶する勢いの魔力がフレアに流れる。
──復帰──復帰──復帰。
相次いで聞こえるこの場に消耗と回復を繰り重ね「残り百兆を切る」と、プロテクトに切り替える命令が下る。
以降。室内に機械音声「clear」が響くと、青い球体の赤い部分が消えていく。
まるで発現するレーザーが赤い部分を焦がす様に激減し「clean」と音声が流れると青い球体が消滅した。
辛辣な顔で「終わった」と白服を筆頭に、度重なる溜息と。
「申し訳ございません」
黒目が迷う若い女性が謝罪する中、皆フレアを敵視している。
「お前は…SDカードを早く持って来い」
俊敏と納品する、若い女性に伴い白服が血走る目で「フレア」と怒鳴り上げた。
「何よ?」
俺らに向かいながらネクタイを緩め、
「貴様には追って通達する、ついてこい」
出口に首を振り、一室を去る白服に付いていくが、ぼろぼろの情景に足が止まる。
「ありがとうございました」
「ええ、お気になさらず」
ドアを閉める俺は後を付いていった。
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