第38話 里下り
また「居心地は悪いが、二百のチンピラに狼狽えはしないよな。聞いてくれ、セイドウ街で豚に真珠って奴が居た話を」と、セイドウ街は黒魔術界の地帯であり「あの日ヒビキ先生が休学を公表し、二人が同時に休学する理由を知るために〝白い羽が舞う美貌の人〟以降の情報をセイドウ街で調べ回った」と服を脱ぎ上半身を曝けるミグサは火傷や刃物による傷だらけの皮膚を見せしめ。
「治安が極悪だと知っていたし、そうそうに黒魔術で皮膚は
何って。
「それは」
俺は「そこで生きてれば知られても不思議じゃないでしょうよ」と告げていた。
「悪いが話術に優れていたとは考え難い。並の世渡りじゃなければ俺の様になった際、どうしてた?」
「
「粛清対象の第六位は
「じゃない?」
「青い髪なんだよ」
「…ん。いや俺の
「象徴?」
「おっふ」
「つまり全力疾走に深い意味はない、よな」
「ない」
「第六位じゃないよな?」
「違うし俺って休学だったの?」
「良かった」
「?」
安心し出すミグサ。
逆にこっちが不安な中「下がれ」と聞こえるし大勢が避難。
また言い合いの様にお前に補助は無理だとの事で「すまない、弟が」と言われ「はい?」と聞けば「悪いシオン、最悪正当防衛で殺っても俺は身内として尊敬する」との翔に「は?」と零れれば下がっていかれた。
気付けば「成績が最下位は特に気にした事無かったが、魔力量にはその分変だと思ってた」とのミグサに周りの距離間が増し。
「はあ?」
「そんなちんちくりんな魔力量であの学校に居ることが論理的に可笑しかったんだ」
「おいちんちくりん言うな」
「ああ、頭脳明晰達が集う所だ。あの時言われたのは首席に合う友達は沢山いる、だったがはっきり言って逆だ。これは主観だが学校なんざ成績は愚か勉強なんてする必要もないと思ってる。要は生きると知識に相関はあれど因果じゃないって感じだ。だからさ、実戦関連の行事でシオンから一ミリも魔力感じないしやる気ねえんだなって、なのに魔力測定でぶっちぎりの一位だった時は嬉しかった」
「…なんで?」
「だって二年近く片鱗ねえし、そん時は黒魔術の方角に不安だったが違えんだろ? なら魔王のもので合点がいく。それどころか上限魔力量の圧巻ったら嬉しい通り越してスカッとした。俺はさ、成績と生命力を紐付ける教師達に唱えてたんだ。なわけねえ…理屈じゃ説明できないが経験上、あいつは強いんだってよ」
一帯にドスが馳せていた。
いたというのは体の方が速く、ミグサのドスを聞いていた間に蹴りが五回。
軽快な逆立ちで腕力を加えたり、両手を地に滑らせ引っ掛けるかの蹴り。
三段回のもの。
俺は咄嗟に躱すが防衛に徹し、一打が重い。
柔軟に体を使う動作が独創的で、これは、喧嘩慣れ?
耳に「凄え」と聞こえるがこっちは変な感情が揺らいで五感が鮮明に働く。
俺の拳が頬に当たり「参った」と宣言されれば大勢の声援が吹き抜け、いつから合ったのか、それすら分からず現実に還るかの体。
ミグサは服を着て「いいか、腕っ節や武器、数を揃えようと皆共倒れだ。言ってる事分かるな」と提案する。
やってみればいい、それはやってみなければ老いる。
挑戦してはいけない世界に需要はない、だからこそ過ちにケジメを。
その言葉を紡ぐ様に「すまない俺の仲間が粗相をした。俺を好きにしてくれていい」と俺に向き合う代表者。
「そして翔さん。今まですいません。思いは違えどありがとうございました」
仲間に反撃せず、原動力として兄の座を代わっていた。
翔は「構わない」と立ち合う。
俺も二人がいいならそれでよかったが「どういう鍛え方したらあなたの様になれますか」と俺の両手を握る代表者。
尊く見つめて代表者。
「あなたに惚れました」
「惚れ?」
いや。
「…いやいやいや、俺は」
つい最近鏡で確認はしたがそういうのは心臓に悪い。
変な汗や腰が抜けてしまう中シイナが来る。
「おおいい所に来てくれた、凄い怖いこの人を止めてくれ」
「ええ、当たり前ですよ、懲りないんですから」
掌に紅い魔力を漂わせ首を曲げるシイナ。
俺は「そういう冗談いいから何とかしてよ!」と発した頃、雲一つない天候から落雷。
光りが迸る芝に倒れると「吸収は無しです。更に隣の方のダメージはシオン様が肩代わりし、反省して下さい」
脳が回らないし意味不明だし、けど落雷にしては神経に刻まれる深い攻撃だなーと血が上る。
◇◇◇
大勢の中心にいるミグサは話を進めていた。
「そういえば工藤のハンドル鬼だったな」
「クラッチ難しくないっすか?」
「ああ…慣れればいけるよ、乗ってみれば?」
「いいっすよ、切れないのが目に見えてるから」
和む賑わい。
ミグサは「借りてもいいか?」と
その発言に歓喜が湧いた。
まるでどこを走るのか、そんな活気が別の方向に着地した。
「田園の方だ」
「結構な住宅街ですね…用事か何か?」
「ああ水城総一の寝首掻っ切りに行く大事な用事だ」
「はは! 急に冗談キツいですよ、親父さんの首…」
「うん十万の兵隊束ねる首魁を討てるはずないですよ。海に沈められますって」
「さっき見ただろ? ここに居た頃より強くなった。であれは息子の命を支配する奴だ。あの野郎が悪巧みで世に轟かす豪運も、武力も、俺が蘇ったのが運の尽きだ。分かったら工藤鍵」
半目のミグサに鍵が飛ぶ。
その輪っかを指で回しバイクに向かう。
「いや全然分かんねえです…ちょっと、皆! この人止めるの手伝え…」
欠伸するミグサを数十人が押さえ込む綱引きみたいな風景に、白い羽根が舞っており「何してるの?」とバイクに腰掛けていたメイミア。
ミグサは「おう…久しぶり、喋りにくいんだが、シオンとついでに御礼参りがてら」と進み。
「………クスっ、そんなの私が許さないよ」
メイミアの瞳に動揺が写り「どっちを?」と強張ったものへ小首を曲げて微笑み返す。
「御礼参り」
「…分かった。返すよ鍵…お前らも離れろ、気色悪い」
利き手を振り翔の方に歩いて行く。
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