四章 現代に行く
第21話 転移
青い、浅い光、そこから目覚め、声にならない口元に力を込める。
「なんてね、言うわけないじゃんバーカ」
あざ笑って、苦い表情を張り合わす勇ましさに、
笑い、
だって
俺は改めて諭される。
白って良いなって。
こんな平和がまかり通っているのだから。
幸せな世界だ。
幸せな世界に身を置いていれば同じ様になれる事も。
──でも。
──それでも。
白が国を救えても家族を救えるのは白じゃない。
俺は返事のしようもない先生にそうなぞらえて言った。
「だってもう」
──ないのだから──
◇◇◇
視覚にメラメラ燃える景色が映る。
横柄な魔力が体から湧き額に血管が走っていた。
まるで勇ましい腕に力みがかっている姿がいつも通りで安心する。
「ありのままでいてくれ」
俺は自然体で伝える。
瞬間ベールが身勝手に解放された。
「森林が、成長している…」
樹木そのものが輝き出し、太く長く根付いている。これを先生が
「不味い…」
声に振り向くと淡い白光を纏う姿があった、その後のこと。
「じゃあね先生」
左手を外に振るい空気を震わして波紋を創るメイミア。
それが連鎖し一帯の青を染める様に重ねている。
流れ、塗られる色彩が白く進行を増す頃には俺との狭間に強く、光球が照らし。
「ああ!」
深みの声に向く。樹木が見える枝先が、葉が、金色に光って揺れていた。
眩しくて視界を閉ざしたら薄い残像が手を振っていた気がして。目を開ける。
すると──
ストレートの白銀髪が肩に聖剣を乗せている。
潤みし若くその姿は
心臓を
「ここは!……水?」
走っていた俺は突っ立っている意識を取り戻す。
水の音がするここは見渡す限りに地平線、そして半月が水面に映った所にメイミアが居る。
「丁度用事があったからね。シオンも来て」
横顔で誘われる俺は違和感を覚えつつ、水で浸される足場を進めた。
浅い水辺を歩み、メイミアに追い付くと水深は膝に達し階段に差し掛かった。
「…いや、溺れる」
胸付近の水面を覗くと長方形の灰色の石がある、その連なってる入り口で一段目にメイミアが浸かっている。
「入っても息出来るよ」
「でも…」
背に言って進めずにいたら円を描く波の音がして、上目遣いで紡がれた。
「行くんでしょう?」
掌を差し出された状況に後退りし、しかし、数秒の時をもって握った。息を止め、引かれながら水中に入っていく。
「どう? 歩いて他所の世界に行く気分は……シオン?」
声は普通に聞こえるんだが。
「ぶくぶくぶくぶく。ぷく……ぼふぁ!」
むりむりむり水中で息するとかそんな度胸ないって!
「………クスっ。息をすればいいのに、っ凄い顔」
空気を求めもがいている俺は高速で遠ざかる絶望に息を
「んんっ……んん。ん、んっんんん"……ふぁあ‼︎」
つうか──
「一人で歩けるわ‼︎ はぁ…はぁ。ゲホっ……」
息止めの限界で吸い込んだら酸素が満たされる満腹の水と一緒に吐いていた。
その大胆に前によらし目を擦っている、大爆笑のメイミアが。
「だって…必死で上に泳ごうとしてるから…引っ張ってみたら面白くてつい」
──ど突き回してやろうか。
「ふふん、ヴァレンの気持ちが分かったね?」
「やかまし……ゲホっ」
呼吸でむせ返っていたら「さてと」と満足気に「直ぐそばだよ」と紡がれ辺りを見渡す。
緑の芝生に青紫の水晶が散りばめられた、神秘的な場所だった。
「凄」
体感よりも深水していた様で仰げば真っ暗、けれど水晶が発光していて地上は明るい。
「はい転移するよ。そこから動かないでね」
掌で前の方を探っているメイミア。
その声掛けに動いてしまった俺は問い返す。
すると。
「丁度シオンが立ってるそこ! 境界だから動かれると亜空間に行っちゃうからね」
片手間で応える凄そうな言葉にどきどきして、数m離れたメイミアに聞く。
「亜空間とは⁉︎」
言い切った頃には光が
遠目で観る俺に笑顔で振り返った。
「体がひん曲がっちゃうところだよ」
視界は白く覆われ、けして忘れられない残像が残っていく。
◇◇◇
太陽を大の字で浴びている俺は後ろにゴツゴツする感触があった。
起き上がってみると衣服に砂利が入り込み、それを落としながら水流を観る。
「川だ」
目の前に自然の流れがあり、ふと残像を思い出し言葉が再生される。
「イヤイヤそれは無い、無いわ……」
先生にアレだけ言っておいて速攻三途の川出現はあり得ない、けど一応吊らないように準備運動を。
「にしても三途の川って想像より明るい。いや待て、そもそも渡らなければ生き返るんじゃ?」
そもそも三途の川が明るい時点で誘われてる怪しさがある。
それら発想に引っ掛かって、考えさせられる準備運動が奮闘した。
「クソ‼︎ わかんねーよ、川の分際で舐めやがって。いっそ解放して渡って…違うぶっ壊そう」
俺は脱ぎ掛ける服から手を離し、魔力を込めたありったけの手を仰ぐ。
瞬間後ろから手と服を掴まれた。
「あのシオン…目立ってる。一緒に居て恥ずかしいから突然発狂しないでよ。あと服は脱がないでね、人が観てるし」
言われ魔力が分散し振り返ると、真っ赤な顔のメイミアに
見渡せばバケツとスコップが転がっている所の、子供や大人の団体に注目されていた。
「え…人。いやでも亜空間で捻じ曲がって死んだんじゃ」
処理するものが多すぎて焦っていたら噛み合わない様な口を開き始める。
「捻じ曲がる。。あ〜冗談だよ。私が亜空間の事知ってる訳ないでしょ」
「えぇ…」
「あっ! だから三途の川とか壊すとか言ってたんだ。後ろで観察してたら急に挙動不審な事し始めるから」
閃いたかの意地悪そうに話す内容を思い描く俺は、客観的に、自分の発言行動が見知らぬ人に見られていたと想像すると込み上がるものがあった。
「死にたい」
項垂れながらこの場を離れ、只今、前方から鉄の塊が走って来る謎の光景に出くわした。
「車来るよ。白線の内側に入ってね」
道路を優先的に走るものと説明され、横切るその窓に人がいた不思議な乗り物だった。
また過ぎていく上の方にはコンクリートの柱同士が繋がる線に翼を持った漆黒の生き物がカーカー鳴いていた。
「アレはメイミアの仲間か? 凄い似てる」
そう言って観察してると吐息が掛かった。
なんなら殺意も合わさってる横頬に声が加わる。
「誰がカラスと似てるの?」
漆黒の生き物が急に知らないという飛びっぷりで空を泳いでいく、また首を振るとメイミアにガン見されていた。
また更に魔力は使わず、根源的に
「…はい?」
聞き返す事すら億劫なものを伝えた矢先、優しい声で言い寄られる。
「ねえシオン。私はここに置き去りにしたりヴァレン達に現在地を伝える事も出来る。次
癇に障る事が何か分からず聞いてみたいが、先ず渾身の笑顔を作ってみて。
「はい!」
「よろしい」
殺意は収まっていった。
この熱した気温の中でメイミアに大人しく付いて行く。
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