第6話 実感と沖田総司

ドタドタドタ、と聞こえて




『あ、ちょ、待ちなさい!!』



とかけられた声はもう遅くて。



すぱーーーん!!とこれまた豪快に開けられた障子を見やると、私とそう歳が変わらないくらいの、月代を剃った男性が満面の笑みでこちらを見ていた。




『この子ですか?歳さんが攫ってきた女の子っていうのは。』




スタスタと部屋の中に入ってきて、私の顔を覗き込む。




すると顔を引き攣らせて『ぐえっ』と言って後ろに倒れたので顔を上げると、その男性の首根っこを掴んで、めちゃくちゃ怒った土方さんと、困ったようにため息をつく山南さんがいた。






『おいコラ総司ぃ…人聞きの悪い言い方するんじゃねぇ!道端で!倒れてたから!連れ帰ってきたんだよ!!』



『えぇー、でも倒れてたのを見たのは歳さんしかいないんでしょう?攫ったんだとしてもそんなの誰にも分からないじゃないですか!』




『やかましい!!』




いきなり目の前で始まった喧嘩を呆気に取られて見ていると、




『歳!!総司!!!やめなさい!!』



と近藤さんが一喝した。









…総司?もしかして、沖田総司?




新選組1番組組長で、天才剣士と言われた、

沖田総司?



沖田総司(仮)は私の前に座ると、ニッと笑って、



『僕は、沖田総司。ここ、試衛館の塾頭をしているんだ。君は?』



やっぱり沖田総司だった!!!!

うわっ!また凄い人が目の前に…。




思わず顔を手で覆うと、




『まだ身体が本調子じゃねぇんだ。ゆっくり休ませてやれ。』




『でも歳さんは話したんでしょう?ずるいなぁ、自分ばっかり。もしかしてやっぱり攫ってきちゃったんですか?』




『うるさいんだよお前は!!ちょっとこっち来い!!!!』





土方さんに引き摺られながら沖田総司が部屋から出ていくと、近藤さんがやれやれ、と笑いながら、私を見る。




『すまないね、総司と歳はいつもあんな感じなんだ。総司は今20歳で、君とひとつしか歳が変わらないから仲良くなれるのではないかな。』





20歳…!ということは沖田総司の生年は諸説あるけど1842年説が正しいんだ…!

現在万延2年、ということは1861年。

昔の人は数え年で生まれた時に既に1歳と数えるから私たち現代人よりひとつ歳をとるのが早いはず。

…ってことは沖田総司は現代の数え方で歳を数えると19歳。







…沖田総司と同い年!?





今までタイムスリップした実感なんてなかったのに、一気に実感が湧いた。





いきなり160年も前の世界にタイムスリップして。




歴史上の人物と…しかも大好きな新選組と出会ってしまって。




現代への帰り方は分からないし、それが可能なのかも分からない。






自分が現代に帰りたいのかも、分からない。





目の前の近藤さんを見上げながら、『やっぱり本物だよなぁ』なんて考えていた。






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