30年前の嫁を同級生(女子)の立場でオトさないと元の世界に帰れません。
足立 翔吾
第1話 入学式前夜
目が覚めると実家の自室のベッドだった。時計を見ると1991年4月7日(日)
23時ちょうどだった。夢じゃなかったのか。本当に30年タイムスリップしたらしい。目線が低い。背が相当縮んだようだ。髪の毛が長くて邪魔だったので、
懐かしい学習机の上にあったヘアゴムで無造作にポニーテールを作る。
下の居間に行くと、やたら若い、昔の姿そのままの母親がいた。
30年前のパラレルワールドなのか?だとしたら父親はもう寝ているはず。
45年、男性として生きてきた記憶はあるが、当然、この世界での記憶なんてない。
いきなり15歳の女の子になってしまったが、以前のこの体と心はどんな女の子をやっていたのだろう?部屋を見渡すと昔の実家そのままだったので、自分と同じように特に問題なくやってきたのかな?意識が突然、45歳のおっさんに乗っ取られて、
この子の意識はどこへ行ったのだろうか?
おそらくパラレルワールドのもう一人の自分とはいえ、違った人生を歩んでいた15歳の少女に申し訳なく思う。
世間一般でいうおそらく神様と呼ばれる「存在X」がされた事なので、
辻褄がどのように合っているのか全く解らないけど。そんなことを考えていると、
「翔子、起きてきて大丈夫なの?明日は入学式なんだから早く寝なさいよ」
母親が言った。若過ぎて内心笑う。元の世界の俺とほぼ同い年だし。
しょうこ?元の世界では翔吾だったが、この世界では濁点が取れただけか。
何という安直な・・・覚えやすいからいいか。
「わかってるよ」俺の方は2021年の言い方で返す。が、声が高い。
「意識が戻って良かった。本当、心配したわ」
「え?」
母親の話によると、この体の本来の持ち主も事故にあってICUに入っていたらしい。
パラレルワールドの俺なんだけど、その子の意識は今もどこかで眠り続けているのだろうか?それともまた存在Xの試練で別のパラレルワールドに?
とにかく、これからは普通の女子高生として振る舞わなければ、体を借りている方としては申し訳ない。特別な使命を帯びてはいるが。明日は同じ入学式に出席するであろう、30年前の嫁に会えるだろうか?
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