第1話 確信
もうすぐ僕は死ぬだろう。
余命宣告されたわけでは無い。
お金もあるし、何よりこの血色のいい顔のどこに死の影など見えるだろうか。
ただ、もうすぐ死ぬだろう。そうなって当たり前だろうと僕は思う。
なんてったって、僕はどうしようもない、正真正銘のクズだからだ。
端的に言おう。僕はニートだ。
親の脛を齧ってしゃぶって、骨の髄まで吸い尽くさんとしている大人だ。
親は何も言わないのかって?
心配には及ばない。国家試験の受験勉強のふりをしていれば、何年かは凌げる。この方法で、もうかれこれ二年ほど資金を得て、一人で篭城している。
そんな僕はいたって健康で、将来のこと以外に何の心配も無い。未来は見ての通りとっくに諦めたので、実質ストレスフリーだ。
──だからこそ、だ。
だからこそ、そろそろ死ぬ気がする。
「ばちが当たる」とか、「天罰が下る」など、聞き覚えはないだろうか。
僕はよく幼い頃、親にそう諌められた。
それが潜在意識に染み付いているからなのか、これだけの悪行を行っていて、「そろそろバチが下るころではないか」と言う思いが頭から離れないのだ。
一時期はそれが怖かった。
だから、タンスの角に小指を何度もぶつけてみたり、わざと小銭を自販機の下の奥深くに投げ入れてみたりした時期もあった。
僕なりの罪滅ぼしだったのだろう。
そんなバカなことを繰り返すうちに、感覚が、感情が麻痺した。
死さえも怖くなくなったような気がした。
どう思われようが、陰口を叩かれようが、両親にPS4のケーブルで首を絞められようが、もうどうだって良くなったのだ。
だから、今は、「『天罰』が下るだろう。いや下るのだ。」
そんな妙な確信だけが残っている。
正確には、「残っていた」。
あいつに会うまでは。
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