明日も生きることを望んで
夏野空
プロローグ
「朝から夜になる瞬間、夜から朝になる瞬間って生きている心地がしないよね」
「ふわふわ浮いているような、この世じゃないみたいな。このまま世界を飲み込んでしまえばいいのにって思うんだよね、君もそう思う?」と楽しげに彼女は言った。
「そんなこと君くらいしか思わないと思うよ」と僕は素っ気なく言った。
この世は桃源郷ではないし、夢物語のような人生を送れるわけでもない。楽しいことと辛いことは半々ある、ということを昔に親から聞いた気がするが辛いことの方が多いように僕は思う。彼女が何を言いたいのかわからないわけではないが、彼女のその真剣な表情から冗談を言っているようには見えなかったので、僕はただ何となく否定しておいた。
「そっかー、それは残念だなー」彼女はどこか寂しげに見えた。
「じゃあ、もしこの世界が本当に飲み込まれちゃったら生き残るのは私だけだね!」
「それはどういう意味?」今度は彼女が何を言いたいのかよくわからなかった。
「内緒」と少し悲しいような面向きで彼女は言った。
今思えば、この時僕/私は彼女/彼にもっと寄り添っていればよかったのかもしれない。
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