第2話


山野井さんは俺の勤めるIT会社の上司である。

容姿端麗の美人上司。

男性社員からモテモテで、常日頃、

「山野井さん、飯行きましょ!」

「山野井さん、今夜空いてますか?

俺と一緒に飲みに...」

などと誘われていたが、彼女は冷たく断っていた。


「あのねー、私、仕事で忙しいの。

話しかけないで」


「いやでも、もう、机の上、片付いているじゃないですか?」


「うるさいなー。他の女性社員誘えばいいじゃない?」


「....っ」


などと、有無を言わさず、

男性社員を蹴散らしていた。

基本的に。

周りの男性に完全なる塩対応。


そんな美人上司は。


何故か俺にだけ甘い。


「山吹くん。頑張り過ぎてない?

ほら、アイスコーヒー買ってきてあげたわよ」


そんなことを言いながら、

プログラミング中の俺をねぎらってくれる。


ピトっと、冷たい缶コーヒーを、

おでこに当てられて。


本当なら美人上司を前にして

真っ赤になってしまうところだが、

ひんやりとした缶のおかげで、

ドキドキ感が下がってくれてる。


「ほら、一息入れなよ」


「あ、はい!ありがとうございます!」


山野井さんは俺にコーヒーを手渡すと、

くるり向きを変えて、デスクに戻って行った。


この光景。


完全に他の男性社員のやっかみを買ってる。


俺は食堂での飯の時間や、仕事の休憩時間に、

山野井さん目当ての男性社員、先輩や後輩たちから、文句を言われる毎日だった。


喫煙所にて。


「何なんだよ、なんでお前には

山野井さん、甘いんだよ」


「さぁー??」


「おかしいよな、どうして山吹に対して、

優しいんだかわからねぇな」

「それ、俺も思いました!なぜか、山吹先輩を前にしたときは、山野井さん、態度違いますよね」

「まさか、おまえら二人できてるとかねぇよな?」


「いや、全然、ないですよ」










iPhoneから送信

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る