第59話 おばちゃん…
夏が終わり学校が始まる。学校から帰ると家に一人、誰かと遊びにでかけることもしない。窓から月を眺める。綺麗なはずのまるい月はわたしにの心にはなにも響かなかった。まだ白い月。日が沈んだ空を見上げる。そして父の足音がするのを待っている。
食事をして、学校に行き、食事をして、宿題をして、お風呂に入って寝る。なにかの変化がほしいとは思わなかった。本を読んでいる時がシアワセだった。
ある日、遠くに行くと言っていたエリカ叔母ちゃんはいなくなった。「お見送りに行くよ。」と父は言う。父に連れられて行く、そこには叔母ちゃんの写真の飾られた祭壇。それを見た途端、全身の力が抜ける。『待ってたのに、ずっと待ってたのに。』もう会えないことを悟る。そこにはあの日叔母ちゃんを迎えに来ていたあの人もいた。あと女の人、初めて会う人だと思う。叔母ちゃんのお見送りに四人、わたしも含めて。『おばちゃん』叫びたかった。なんであの時はっきり言ってくれなかったんだろ「もう会えないよ。」って、『ずるいよ。』残されたわたしはどうなるの。二度母を失くしたような、そんな感じ………。「ずるいよ。」わたしの口から言葉が漏れる。思いを言葉にしたのは、いつだったろうか。
「ナズナちゃん…」あの男の人が身を屈め、わたしの目線になる。「大丈夫、ぼくもエリカもお母さんもお父さんもついてるから。」その言葉に両手でこぶしを握りしめ…泣いた。父もわたしの頭を撫でてくれる。父の手は少し震えていた。その傍らで母の気配がした。
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