第58話 再会
「ありがとう、エリカさん。ご飯は食べた?」
父は叔母ちゃんに言う。
「食べました。ナズナちゃんとカレー作ったんで、よかったら食べて下さい。ね、ナズナちゃん。」
叔母ちゃんはわたしに微笑む。わたしも微笑む。
「いつも面倒かけて、申し訳ない。」
父は叔母ちゃんに頭を下げる。
「面倒だなんて思ってませんよ。」
叔母ちゃんは応える。
「本当にありがとう。家まで送りますね。」父がそう言うと、
「迎えに来るって言ってたんで大丈夫です。」と叔母ちゃんはそう言ってカバンから携帯を取り出し電話をかける。
「まだ和也さんのとこ、迎え来てくれる?」
電話の相手は誰かはわからない。エリカ叔母ちゃんの迎えを待っている間、父に今日のことを話す。一緒に歩いて買い物に行ったこと、二人でカレーを作ったことなど、父は頷きながら話を聞いている。
しばらくして、叔母ちゃんの携帯が鳴る。
「下まで来てるみたいなんで、帰りますね。お邪魔しました。ナズナちゃん、またね。」叔母ちゃんは手を振る。
「また来てね。」わたしも手を振る。
「下まで送ってくるから、待ってて。」父は私に向かって言う。
「ナズナも行っていい?」わたしも見送りしたかった。
「いいよ。おいで。」
裸足で靴を履いて階段を降りると、道路脇に車が停まっている。迎えの車のようだ。辺りは虫の声がする。風はなく、蒸し暑い。車のドアが開き男の人が降りてきて、こちらに歩いてくる。
「忙しそうだな。」その人は父に話かける。
「まあね。もう少ししたら落ち着くと思う。いつも世話になってありがとう。」
「俺は何もしてないよ。」その人は笑う。
その人はわたしの顔を見て「久しぶりだね、大きくなったね。」とうれしそうな顔をする。わたしもなんだかうれしくなった。前に会ったことがあるのかもしれないが思い出せなかった。
「じゃあ。今度また飲みにでも行こう。」
その人は父にそう言うと車に乗り込む。叔母ちゃんは助手席に乗る。叔母ちゃんは車の窓を開け手を振っている。父とふたりで車を見送った。車の音は遠くなり、虫の声がまた聞こえる。
「お友達?」わたしは父を見上げる。
「そうだよ。」父もわたしを見て応える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます