第46話 構築
粉々になり、ナズナの形はなくなる。その状態で漂う。舞台は転換され、水と光の世界。
『すごいな。』
ナズナは圧倒される。先ほどのような恐怖はない。
波のない水面。風もないのだろう。地球とは違うのはすぐにわかる。体はないがこの舞台を感じることはできる。肌はないが、肌で感じる。どこまでも見渡せる。動かなくても、どこまでも景色が変わらないのは理解できる。ナズナは試しに上昇してみる。見おろすと水の透明度はかなり高そうだが底は見えない。上をみても同じ。水と光の二色だけで構成された世界。
『どうしろと?』
しばらく上の方で漂うと『潜ってみるか。』と思う。すぐに水面ギリギリの所に移る。そして潜る。ナズナは潜るが波も波紋もできない。ナズナはいないのと同じくらい希薄なものになっていた。だけど居る。いくら潜っても底は見えない。まだまだ潜る。けれど景色は変わらない。これ以上潜るのをあきらめた時、水面にいた。自由に動けるがやることはない。面白い話を思いついても聞いてくれる人は誰もいない。
『広いだけでつまんないな。ここ。』
『 レイ 』
ナズナはレイを呼ぶ。声ではない声で。
『 ナズナ 』
声ではない声が聞こえる。
水と光の世界で、ようやく変化が訪れる。生きた光が現れた。
『どこ?』ナズナは探すが、なんの姿も見えない。
『ナズナどこ?』また声がする。
『ここよ。』ナズナはもとの世界の姿で水面に立っていた。ナズナが人の姿になると、レイが人の姿で現れる。
「無事みたいね。」レイはナズナに手をのばす。
「また会えてよかった。」ナズナはその手にタッチする。触れることができた。なにかに触れるのはどれくらいぶりだろう。止まっていた時が動きだしたように思えた。
「なにしようか?」レイは笑った。
「影踏みしよう。」ナズナも笑った。二人の足元には影が現れた。影は水面に写り、水の中にのびる。ここではなんでもできるんだ。二人はそのことをわかっていた。初めてここに来たはずなのに、知っていた。
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