第16話 白兎

「僕もなんかあれば、助けに行きます。よくまだ事情はわかりませんが。ごちそうさま。腹一杯だ。」リンは食べ終わった食器を片付け始める。レイはあらかた食器を下げ台所で洗い物を始めている。リンは食器をさげてからメモ紙にボールペンでなにか書いている。それをナズナに渡す。

「これ僕の番号です。あとで着信残しておいて下さい。連絡くれたらすぐ行きます。でなくても鳴らしてくれるだけでいいですから。」

「ありがとう。」ナズナはメモを手に持ったまま沙絵に尋ねる。

「あの、うさぎってなんですか?」

考えて、考えて、ようやく絞りだしたナズナの問い。沙絵はやさしく応える。

「知ってるでしょ?うさぎを追っていくの白兎を追って穴に入るの。あとなにかのセリフでもなかったかな『白兎を追え!』って言われるの。あれと同じ、あれ書いた人も知ってるんじゃないかな。」

「時計を持ったうさぎなんですね?」ナズナは素直だ。沙絵は予想していなかった返しに戸惑う。

「私のは…持ってないけど。あれ、どうだったかな?持ってたかな。兎に角、道しるべになってくれるの。まずは穴探しね。」

沙絵は立ち上がり話を終える。


「またちょっとずつ話しましょう。ナズナちゃんのお土産があったね。ひつじのお菓子。紅茶いれようか。」

「僕も買ってきてた。ひつじ。考えること一緒ですね。」

レイは台所からまた見ている。

「おまえと一緒にするな、わけがわからない事ばかり言いやがって。なにが『考えること一緒ですね』だ。気持ち悪い。」言い放ってまた食器を洗い始める。

「レイいいよ、大丈夫だから。」

ナズナはレイに向かって言った。

「そうよ、リンもレイも言い過ぎよ。」

沙絵は的ハズレなことは言っていない。

「ごめんなさい。」リンは謝るしかなかった。そして思った『よく考えてから言葉にしよう』と。

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