第19話 揺れ

「ありがとうございました。」

ナズナが風呂から上がってきた。パジャマに着替えている。

「かわいい…」

リンは風呂上がりのナズナを見てゆるくなっている。

「リン、心の声漏れてるぞ。」

「えっ。なんか聞こえた?」

「聞こえるよ。言ってただろう。」

「言ってない。」

「言ってたよ。」

「あなたたちいつまでやってるの!はやくお風呂にはいって!」

沙絵の一喝。

「姉ちゃん先に入ったら?」

妥当な順番である。

「そうするよ。わたしの部屋にドライヤーあるから使って。着替えとってくる。ナズナ行こう。」

「うん。」

二人はレイの部屋に入る。


居間には沙絵とリン。

「あなた学校どうなの?寮の人達と仲良くやれてる?」

「まあね。」

「まあねってなによ。ご飯は?足りてる?」

「足りてるよ。お代わりできるし…」


ドンッ!


家が少し沈んだような感覚。

「…直下型?イヤな揺れ。」

リンは窓を開けに走る。次の揺れに備える。少し待つが次はこない。一回きりの揺れ。

「地震速報もないわね。」

沙絵はいくつかテレビのチャンネルを替える。

「なんか来たかな?」

リンは窓とカーテンを閉める。

「そうかもね。」

沙絵はレイの部屋の前に行きノックする。

「大丈夫?」

レイが顔を出す。落ち着いた様子。

「揺れたよね?地震?」

「地震じゃないみたい。リンが外みてくるから。」

沙絵がレイに話しているのを聞いて、リンは『えっ?』と言う顔をしたが、黙ってコートを羽織る。靴を履き振り向いて「なんかあったらきてよ。」そう言ってでていく。


 周りの住宅から漏れる灯り。

「さぶっ。」リンは空を見る。薄曇り、星は隠れている。

「雪降るな。」そうつぶやいて階段を降りていく。

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