第20話 夜の街

 リンは家全体が見える位置まで移動する。車の通りはない。街の灯りで家の輪郭が浮かぶ。

「高い所からみないとダメだな。」と独り言。何かを両手で空に飛ばす仕草。家の階段の前まで戻りながら何かを見ている。視線の先ではない、どこか遠く一点を見ている。凄く静かだ。リンは俯瞰していた。自分の姿も上からとらえ、あたりを何か居ないか探している。


「なんでここにいるのよ。」リンはつぶやき、階段を駆け戻りドアを開けて叫ぶ。

「かあさん!ちょっと来て!」

「なにかいた?」

そう言いながら沙絵は玄関まで出てきた。

「うさぎ居たんだけど。どういうこと?」

「放っておいて大丈夫よ。」

沙絵は落ち着いている。

「でも、なんか気になるから見てくる。」

「いってらっしゃい。気をつけてね。」

リンはまた外に出ていく。そして、宙を見ながら走る。向こうからヘッドライトが近づいてくる。立ち止まって車を交わす。そしてまた、うさぎの行方を追いながら走る。


 リンはうさぎの姿をとらえた。低い位置の視界になる。

「居た。何してるんだ?」

後を追いながらうさぎを観察する。動いては休み、動いては休み、でも前進はしているようだ。しばらく進むと家の陰に入りうずくまっているようである。立ち止まって観察。動かなくなった。

「大丈夫か?寝てるのか?」

うさぎは寝てるかどうかはわからないが大丈夫なようだ。しばらくそこで立ってみていたが動く素振りはない。

「帰ろ。」と言ってリンは来た道を戻る。


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